令和の空
まぶしい光が、一気に目の奥まで飛び込んできた。
思わず五人は目を細め――そして、息をのんだ。
「……な、なにこれ……」アヤメが口元を押さえた。
見上げると、空の高みに、巨大な金属の鳥――いや、それは羽ばたくこともなく、轟音を響かせて一直線に飛んでいく。
「と、鳥じゃない……何?……怖い 」ミオが目を丸くする。
「おい、落ちてこねぇよな!?」カズマが半歩下がった。
頭上では飛行機の音がごうごうと響き、胸の奥まで震えるようだった。
地面に目をやれば、そこには石畳ではなく、真っ黒でつるつるとした道がどこまでも続いている。アスファルト、という名も知らない物質が、足元から遠くまで広がっていた。
「うわっ、これ……なんか、やけに固ぇな。刀、刃こぼれしそうだぞ」ヨシロウが地面をこつこつ叩く。
その脇を、見たことのない形の箱――いや、車が、ごうっと音を立てて通りすぎる。風圧が頬をなで、タケルが思わずしゃがみこんだ。
「な、なんだ今の!? 馬車より速ぇぞ!」
「馬、いなかったよね!?」
アヤメが半泣きでミオの腕を掴む。
「うん……あと、人が……多すぎ……」
周りを見渡せば、見慣れぬ服を着た人々が、忙しそうに行き交っている。着物の者は一人もおらず、男も女も鮮やかな色や形の布を体にぴったりとまとい、肩から奇妙な袋を下げ、手には四角い板のようなものを持っている。
その板が突然光ったり、音を出したりするたび、カズマが「ひっ!」と肩を跳ねさせる。
「……ここ……どこだ……?」
カズマがぽかんと口を開けたままつぶやく。
「江戸じゃねぇ……尾張でもねぇ……」
ヨシロウは無意識に刀の柄を握りしめ、周囲を警戒した。
「まさか……異国?」
「でも、みんな日本語しゃべってるっぽいよ……」ミオが耳を澄ます。
「じゃあ……ここって……」タケルがごくりと唾を飲む。
――そう、そこは令和時代の日本だった。