「一緒に寝るの、どっち……?」
(ショートエピソード)
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その夜。
「お風呂、先ありがとー♪」
髪をタオルで包んだまま、二葉がリビングに入ってくる。
続いて、髪を軽く乾かした一花が無言で現れる。
「……で、今日はどこで寝るの?」
一花の問いに、連が口を開く間もなく――
「もちろん! 兄貴の部屋ーっ!!」
「ちょ、待っ……!」
「ダメ?」
上目遣いで二葉がくいっと袖を引っ張る。
バスローブからのぞく肩にドキリとしながら、連は目をそらす。
「高校生の女の子が、男の部屋で寝るなっ……!」
「えー、でも兄妹だよぉ? 昔はよく川の字で寝てたじゃん♪」
「それとこれとは……っ」
「……私も、寝たいな。兄さんの隣」
静かに座り込みながら、一花が毛布を抱きしめた。
「ほら、前に風邪ひいた時、夜中ずっとそばにいてくれたでしょ? あれ、すごく安心したの」
「一花、おまえまで……」
「……じゃあ、どっちを選ぶの? 兄さん」
二人の視線が交差する。
一花は冷静な瞳の奥にほんのりと熱を宿し、
二葉は不満げにぷくっと頬を膨らませながらも、体を密着させる。
「……選ばないと、ふて寝するからね?」
「無視したら、朝までくっついて寝ちゃうもん!」
連は思わず頭を抱える。
「どっちでもマズいんだよ……!」
だが、もはや布団は広げられ、枕も“兄貴を中心に”左右に並べられている。
――こうして、
その夜の布団は「川の字」ではなく「両サイド妹」体制となった。
そして。
「……おやすみ、兄さん」
「おやすみ~♪ くっついて寝ても、いいよね?」
左右から聞こえる、
ちょっぴり熱っぽい甘い声。
連の心臓は、寝つけるわけもなく――。