「四人で温泉旅行!神と記憶と湯けむりの甘い休日」
「四人で温泉旅行!神と記憶と湯けむりの甘い休日」
新たな神格の融合を終えた連とフィリア。
一花と二葉との穏やかな日常も少しずつ戻ってきていた。
だが――そんなとき、フィリアが小さな声でぽつりとつぶやく。
「……温泉、行きたい」
「は?」
「だって……いっぱい大変なことがあったじゃない。少しくらい、癒されてもいいでしょ?」
一花がパチンと手を打つ。
「いいじゃない! みんなで旅行、すっごく楽しそう!」
二葉も満面の笑みでうなずいた。
「賛成っ。連お兄ちゃんがいればどこでも楽しいけど、温泉ならもっと楽しい!」
ということで――
連は、神の力をほんの少し借りて、「誰にも知られていない静かな温泉宿」をこの世界に生成することに成功する。
神の力の使い方、ずいぶん贅沢になってきた気がするが……まぁいいか。
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温泉宿《玉響の里》
美しい森と小川の中にぽつんと建つ、和風の温泉宿。
木造の廊下、風情のある庭、そして――貸切露天風呂!
宿に着いた一花と二葉は、もうテンション最高潮。
「うわ〜〜〜っ! 本物の温泉だよ、フィリアちゃん!」
「は、はい……湯けむり……本物なんですね……!」
フィリアはほんのり頬を赤らめ、連の腕にそっと寄り添う。
一花と二葉も、それぞれ連の左右の腕をがっちりキープ。
「今日は、いっぱい甘えていいんだよね?」
「お兄ちゃんは、私たちを甘やかしてくれるよね?」
連は頭を抱えた。
(お、おい……俺の肋骨が二つくらい折れそうなんだけど……)
そして、夜。――
4人は貸切露天風呂に並んで入ることになる。
(もちろん、それぞれ湯浴み着ありの健全?仕様)
星空が広がる中、温泉の湯けむりに包まれた4人は、まるで夢の中にいるようだった。
「……こうしてると、普通の家族みたいだね」とフィリア。
「普通じゃないけど、うん……でも、幸せだよ」と連が返すと、
一花が小さな声で言う。
「普通じゃなくていいよ。連がいて、二葉がいて、フィリアちゃんがいて……私、こんな時間が、ずっと続けばいいって思うもん」
二葉も、少し目を伏せながら呟く。
「……終わりの神様の力でさ……この幸せ、永遠に閉じ込められないかな……?」
その言葉に、連は黙ってから、こう答えた。
「閉じ込めるんじゃなくて、守っていこう。この時間を、思い出じゃなくて、ずっと今にできるようにさ」
――と、その時。
パァッと空が光り、温泉の中に一枚の“葉”が舞い落ちた。
それは《神々の葉書》――神の気まぐれなメッセージ。
そこに書かれていた言葉は、こうだ。
> 「この幸福、許可す。続けよ。次の扉が開かれるまで。」