「記録と終焉 ― ふたつの神、ふたつの想い」
「記録と終焉 ― ふたつの神、ふたつの想い」
夜、月明かりの差し込む四人の家――。
フィリアは静かに目を覚ました。
誰かの“記憶”が、まるで自分の頭に流れ込んでくるような感覚。
それは、言葉にならないほどの古い記憶。
焼け焦げた本。音も無く崩れる塔。
ただ一人、立ち尽くす――“神”。
「これは……わたし?」
いや、違う。
それは“記録の神”。
すべてを記録し続け、しかし誰にもそれを読まれず、永遠に孤独だった存在。
連のもとへ駆けつけたフィリアは、無意識にその言葉を口にした。
「ねぇ、あなたの中にいる《終わりの神》は……記録の神と、敵だったの?」
連の目が紅く光る。
――神の意志が、そこに宿った。
「……否。敵ではない。ただ、役割が真逆だったのだ」
「記録は“すべてを残す”こと。終わりは“すべてを閉じる”こと」
「共にあれば矛盾し、離れれば意味をなくす」
その瞬間、フィリアの体にも異変が起きた。
彼女の瞳が白銀に染まり、かすかに浮かび上がる“記録の紋章”。
二つの神の気配が、この家の空間を揺らした。
一花と二葉が目を覚ます。
「フィリア!? 連、これは……!」
フィリアの口から、もうひとつの声が響く。
「終焉よ……久しいな。おまえは、今でも終わらせることしかできぬのか?」
「記録……おまえは、今でも“残す”ことしかできぬのか?」
対話というには、あまりに重い。
けれど、それは確かに“会話”だった。
その後、神々は口を閉ざし、四人だけの静寂が戻る。
フィリアが、ぽつりと呟いた。
「……私の中の“記録”は、悲しんでいた。
終わらせてほしかったのかもしれない。ずっと、残しすぎて疲れていたのかも」
連がそっと彼女の手を取る。
「なら、俺たちが終わらせよう。
“記録の神”が孤独だった世界に、ちゃんと“区切り”をつけよう。
忘れることも、終わらせることも、悪いことじゃないんだって」
そして、三人の少女たち――
一花、二葉、フィリアが、連を囲んで微笑んだ。
「じゃあ、四人で一緒に――」
「その《物語》を終わらせて、新しく始めよう!」