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Episode X+13:神の囁き、紅の深層へ ―夜の対話と異世界の真理―  



 


 夜――。


 月の光が静かに部屋を照らす。

 一花と二葉は既に連の両脇でぐっすりと眠っている。2人とも穏やかな寝息を立て、微笑んでいる。


 


 連は目を覚ましたまま、天井を見つめていた。

 ふと、胸の奥で“何か”がざわめいた。


 


 (……神様?)


 


 「……目覚めておったか。よい、今宵は語ろうぞ、連よ」


 


 紅い瞳の奥がゆらりと光る。

 彼の身体に半身宿した神が、静かに姿を現す。とはいえ、神は連の中にいる存在。幻のように、ただ彼の視界に浮かび上がるのみ。


 


 「この世界について…そなたに知らせる時が来た」


 


 連は身体を起こすと、静かに問い返す。


 


 「この世界……神様、ここは一体何なんだ?他に誰かいるのか? 街とか、人とか……」


 


 神はしばし黙った後、語り始めた。


 


 「この地は“縁環えにしかん”という。願いと縁が交わる交差点だ。

 この場に引き寄せられし者は、いずれも“強き想い”を持つ者……転移者もおる。動物も精霊も存在する」


 


 「……じゃあ、俺たちだけじゃないんだな」


 


 「うむ。だが――この地に完全な“秩序”はない。そなたたちが踏みしめるこの地を、どう満たすかは……そなたたち次第よ」


 


 連はその言葉の意味を考える。


 (つまり……ここは、俺たちの想いが創っていく世界なんだ)


 


 「……一花や二葉の願いも?」


 


 「無論。それぞれの“願い”が波紋となり、空を作り、大地を生み出す。愛も、苦しみも、夢もすべて形となる」


 


 連は寝息を立てる妹たちを見やる。


 


 (この2人と作る世界――だったら、どこまでも優しくて、甘くて、安心できる場所にしてやりたい)


 


 「なあ、神様。……ありがとう。けど、もしこの世界に誰かの“悪意”が入り込んだら――?」


 


 神の声が、少しだけ低く響いた。


 


 「その時は、神の器たるそなたが、護るのだ。愛と誓いの名の下に、そなたが選ばれし“縁環の守人”となるであろう」


 


 「守人……か」


 


 「おっと、そなたの心に眠る“鍵”がまた、ひとつ目覚めたようじゃな……」


 


 その瞬間、連の胸元が仄かに紅く輝いた。


 神の力と、連の強き想いが“封印された記憶”を少しずつ解き始めていた。









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