異世界編 Episode X+6:フィリアの中の声。そして、初めての共同生活
異世界編
Episode X+6:フィリアの中の声。そして、初めての共同生活
フィリアが仲間に加わってから三日。
小さな家には、三人と一柱、そしてもう“ひとつ”の気配が穏やかに流れていた。
「連さん、このお茶、とても美味しいですね」
「へへっ、わたしが手伝ったの!」
一花と二葉がはしゃぎ、フィリアは微笑む。
連はというと、静かにその様子を眺めていた。
日常――それが、こんなにも尊い。
だが、その夜。
フィリアはひとり、静かに目を覚ました。
真っ暗な部屋の中、ひと筋の“声”が、彼女の心に囁いた。
> 「――目覚めよ、“器”よ。思い出せ、我が名を……」
「やめて……私は……わたしは、フィリア。
ここに来て、初めて温かさを知った。お願い……放っておいて」
> 「それは願いだな? ならば、叶えてやろう。
だが、代償を――支払う覚悟はあるか?」
「代償……?」
> 「お前が大切だと思うもの、そのすべてを“真実”に変える。
偽りの記憶も、優しさも、愛も――“本物”にしてやる。
だから……受け入れよ、我を――記録の神エル=ファレムを」
その瞬間、フィリアの瞳がわずかに金に染まり――
ふたたび深い眠りに落ちた。
その翌朝。
「おはよう……あれ? フィリアちゃん、寝坊?」
「うーん、夜なかなか眠れなかったって言ってたから……」
連は、ふと心配になりながらも朝食を並べながら言った。
「無理しなくていい。今は、ゆっくりしてもらおう」
――それが、嵐の前の静けさだとは、まだ誰も知らなかった。