異世界編 Episode X+4:森の向こうに誰かがいた? はじまりの出会い編
異世界編
Episode X+4:森の向こうに誰かがいた? はじまりの出会い編
朝――陽射しは穏やかで、鳥のような鳴き声が空に溶けていく。
連は庭先で、摘んだばかりの果実を籠に入れていた。
「兄貴ーっ! こっち来て!」
甲高い声に振り返ると、二葉が木の小道を走ってくる。
その顔には、わずかに不安の色がにじんでいた。
「どうした? ケガでもしたか?」
「違うよ……でも、なんか変。森の向こうから“誰か”の気配がしたの」
一花も後ろから追いかけてきて、頷いた。
「たしかに、気配……というより、“視線”みたいな。じっとこっちを見てた感じがしたの」
連は目を細め、森の向こうを見つめる。
そこには、確かにただの空間ではない――何か“意味”を孕んだような重みがあった。
「……誰かが来るのか? それとも、呼ばれているのか……」
連の中の神が、低く、しかし興味深げに囁いた。
> 「ほう……早くも“外”との接触か。面白い。これは、この世界の拡張が始まった兆しかもしれぬのう」
連はそっと一花と二葉の肩に手を置いた。
「行ってみよう。危険はないと信じたいけど……俺が前に立つ。何かあったら、すぐ逃げるんだ」
「……うん、でも、兄貴一人で突っ込んだりしないでよ?」
「そうよ、私たちも一緒にいるんだから」
森の木々は静かに揺れ、その奥から――
微かに誰かの足音が聞こえた。
それは軽く、どこか懐かしいような響き。
やがて、木陰から姿を現したのは――
白いローブを纏った少女だった。
年の頃は、一花と同じくらい。
透き通るような青い瞳が、じっとこちらを見つめている。
「こんにちは。ここは……貴方たちの世界?」
声は静かで、不思議な響きを持っていた。
だが、怯えている様子はない。
連は、慎重に言葉を返す。
「……ああ、そうだ。俺たちの“願い”で作られた世界だ。
君は……どうしてここに?」
少女はほんの少し首をかしげて、答えた。
「願ったの。『誰かに会いたい』って。
そしたら、ここに来たの。……君たちに呼ばれた気がして」
一花と二葉が顔を見合わせる。
そして、二人同時に微笑んだ。
「じゃあ、歓迎しなきゃね」
「うん、ようこそ。私たちの世界へ」
そして――
新たな“物語”が、静かに幕を開けた。




