異世界編 Episode X+2:神と出会った朝
朝食を終えたあと。
俺たち三人は、ゆったりとした陽だまりの中でくつろいでいた。
ふと、一花が俺に問いかけた。
> 「ねぇ、兄さん……というか、“連”」
「この世界……やっぱり、どこか夢みたいだよね」
「……本当のこと、教えてくれない?」
隣で二葉も、こくりと頷いている。
> 「うん……うちら、すっごく幸せで、嬉しくて……でも、知りたいの。これは“夢”じゃないんだよね?」
俺は少しだけ目を伏せ、そしてゆっくりと口を開いた。
「……これは夢じゃない。だけど、現実でもない。
“俺たちの願い”が叶った世界なんだ。……神様の力で、な」
二人が目を丸くする。
> 「……神様、って、あの“神様”?」 「本物の? 天界にいるような、あの……?」
俺は、少し照れながら笑って続けた。
「うん。けど……その神様、今は“俺の中”にいるんだ」
「俺の身体の半分を……貸した。いや、譲ったんだよ」
『えぇ~!! ヽ(゜д゜ヽ)(ノ゜д゜)ノ!!』
二人がハモって叫んだ。
そのときだった。
――すう、と世界が一瞬だけ静止したように感じた。
俺の視界が赤く染まる。
そして瞳が、鮮紅の光を帯びて輝き出した。
> 「…………まったく、騒がしいな。だが、悪くない」
「ふむ、お主たちが、我を望んだか?」
その声は、俺の口を通じて出ていた。
だが、それは明らかに俺の声じゃない。
重く、厳かで、それでいてどこか人間くさく、飄々としている。
一花と二葉が息を呑む。
> 「……兄さん?」
「違う……でも、兄貴の中に、いるの……?」
「うむ。我が名は……かつて“神”と呼ばれた者。
この男、“連”と契約し、この世界を顕現させた存在よ」
二人はおずおずと頭を下げた。
> 「あ、あの……その、ありがとうございます」
「私たちの……大切な願いを叶えてくれて……」
神は一瞬沈黙し――そして、くつくつと笑った。
> 「礼など不要。我もまた、余生を楽しむためにここへ来た。……見守るだけの神など退屈でな」
「それに……この男の“願い”は、なかなか美しく、面白かったぞ」
俺はゆっくりと頷いた。
「ありがとう、神様。……この世界で、俺たちは、生きていくよ」
神の声は、ゆるやかに薄れていった。
> 「ああ、存分に。……この世界が終わるその日まで――」
――そして、紅の光が消えた。
再び俺の瞳は元に戻り、神の気配は胸の奥に収まった。
一花と二葉が、ほっとしたように微笑む。
> 「じゃあ……この世界は、本当に“私たちの幸せ”のためにあるんだね」
「兄貴……ずっと、ずぅっと一緒にいてね?」
俺は二人の頭に手を添えて、やさしく抱き寄せた。
「もちろんだ。お前たちと――ずっと、生きていく」




