異世界編 Episode X+1:異世界の朝、ふたりの“妻”と
異世界編
Episode X+1:異世界の朝、ふたりの“妻”と
――ふわり、と甘い香りがした。
「……ん、う……?」
目を開けると、見慣れぬ天井。そして、ふわふわのベッド。
その両腕には――。
> 「ん……兄さん、起きた……♡」
「おはよぉ、兄貴♡ 今日から、新婚生活だねっ!」
一花と二葉が、左右から俺の腕にぴったりと抱きついていた。
寝間着――というより、ふわふわのドレスのようなナイトウェア姿で。
「……えっ?」
状況が呑み込めない俺に、一花が囁いた。
> 「ここは、私たちの“願い”が叶った世界……兄さんと、夫婦になれた世界」
「だから、遠慮なんていらないんだよ、兄貴。……だって、私たち、もう“妹”じゃないんだもん♡」
二人の指が俺の胸に触れ、頬にキスを落とす。
脳が焼けるような甘さにくらくらする。
でも、それ以上に――安心感に包まれていた。
「……本当に、これが“俺たちの世界”なんだな」
一花が小さく頷き、二葉がにっこり笑った。
> 「そうだよ、兄さん。ようやく、言えるね」
「……おかえりなさい、“旦那様”♡」
――そうか。
ここでは、もう誰も俺たちを否定しない。
隠す必要も、我慢もいらない。
一花と二葉を、等しく愛せる世界。
これから、俺たち三人の物語がはじまる。
恋人でもなく、兄妹でもなく、“家族”としての物語が――。