【第1話】回想:幼い頃の約束
【第1話】回想:幼い頃の約束
> 舞台は、まだ連が小学年。一花と二葉は幼稚園児くらい。
一度だけ会った“腹違いの妹”たちとの短い時間――。
その時、無邪気に交わした“未来の約束”が、二人の心に深く残った。
『ひみつの約束』
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本文
> 「お兄ちゃん、だーいすきっ!」
そう言って、膝に抱きついてきた小さな双子の女の子。
顔も似ていたけれど、性格は全然違っていた。
一人は、物静かで遠慮がち。でも、時々、じっと俺を見つめてくる。
もう一人は、元気いっぱいで、ずっと俺の手を離さなかった。
その日、母親に連れられて、たった一度だけ会った“妹たち”。
――腹違いの、ふたごの妹。
俺はまだ小さくて、「なんかすごいことなんだな」って曖昧に理解していたけど、
その時間が、妙に楽しくて、温かくて、どこかくすぐったかったのを覚えている。
> 「ねえねえ、お兄ちゃん」
二葉が言った。目をきらきらさせて、両手を広げるように。
「ふたば、おっきくなったら、お兄ちゃんのおよめさんになるね!」
俺は笑って、頭を撫でてやった。
「ふふ、じゃあ、一花は?」
母さんに促されて、一花もおずおずと口を開いた。
「い、いちかも……お兄ちゃんが、いい」
「ふたりともー!? ずるいよー!」
笑いながら、俺は両手を広げた。
「じゃあ、大きくなったら、どっちか……お嫁さんにしてあげようかな」
「ほんとっ!? やくそくだよ!」
「……ゆびきり、する」
小さな二つの指が、俺の小指に絡んできた。
たしかに、あの時、指切りをしたんだ。
――そんな子供の冗談、ずっと覚えてるわけないって?
いや、忘れられるわけないだろ。
あんなにも、まっすぐな瞳で見つめられたのに――。
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次回予告
次は、現代パートへつなげる第2話:
【第2話】再会と同居開始後、ふとした拍子に「約束」が蘇るエピソード




