「おはようバトルは突然に」
(ショートエピソード)
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「……ん……」
朝。ほんのり差し込む日差しと、微かに香るシャンプーの匂いで目を覚ます連。
「おはよう……兄さん」
左耳に、そっと囁く声。一花のものだ。
その直後。
「おっはよー、兄貴っ♪」
反対側から、ぐいっと抱きつかれる感覚。二葉だ。
「うわっ……お前ら、まだいたのか!?」
「『まだ』ってなによ。泊まるって言ったじゃーん」
「……兄さん、寝てる間、ちょっと笑ってたよ」
「え、ホント!? 私の夢見てたんじゃない?」
「ふふ、それはどうかしら。夢で手、握ってたのは私だったけど」
「ちょ、ずるい! 私だって兄貴とくっついて寝たしっ!」
「もう朝だから、はい、起きて。着替えて、朝ごはんよ」
「えー! 先にぎゅってしてからが朝でしょ~?」
二葉が連の首に腕を回そうとした瞬間、
一花が毛布を引き寄せ、**「接近阻止」**を発動。
「……まだ寝ぼけてる兄さんを襲わないで。色々と危ないでしょ」
「はー!? 私がそんなことするわけ……ちょっと一花、布団引っ張らないでよ!」
「そっちこそ。兄さん、寒そうでしょ?」
「ううっ……お前ら、朝からやめてくれ……っ」
左右から毛布を引っ張られ、
連の布団がズルズルと移動する地獄の綱引きに突入。
「……やっぱり一緒の布団にするのが間違いだった」
呟きながら、連は半分放心状態で天井を見つめた。
が――
「じゃあ、次は誰の部屋で寝る? 兄さん」
「次は私のベッドで! 兄貴が動かなくても、ぜーんぶやってあげるからねっ♪」
「お、お前らなぁ……!!」
朝の空気にしては、あまりにも甘くて騒がしい。
今日も平和(?)な一日が始まる――。
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