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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

最後に泣かないで

作者: 氷憐 仁

幼馴染の君と僕、いつも一緒だった

子どもの頃から、どんな時も二人で笑ってた

秘密も未来の夢も、全部分け合っていたのに

気づいたら、どこで間違ったんだろう

この世界は僕たちには冷たすぎた

愛するものさえ遠ざけるほどに、残酷だった

大人になれば何もかもが良くなるなんて

ただの嘘だったと気づいてしまったね

君も僕も、心がすり減って

傷つけあうことしかできなくなっていた

あの日も、君は震える手で僕の手を握って

「もういい、これ以上一人にはしないから」と言った

どこにも居場所がなくて、何も変わらなくて

ただ、二人だけで生きていけたらと願っていた

でも現実はその願いさえも許さなかった

静かな夜、星の見えない空の下で

僕たちは最後の約束を交わした

「どんな世界よりも、ここが私たちの場所」

君が涙を拭って微笑むその顔が、今も焼き付いている

そして手を取り、僕たちは一つになった

永遠に離れないように、二人だけの世界へ

誰もいない、ただ君と僕だけの場所へ

傷つけられた記憶も涙も、もうここでは意味を持たない

笑い合って、手を繋いで、未来を夢見て

でも、大人になるにつれて気づいたんだ

この世界は、あまりにも残酷で冷たいってことに

夢見ていた場所なんて、どこにもなくて

僕たちが望んだ幸せも、遠く霞んで消えていく

いくら走っても、追いつけない

どれだけ叫んでも、誰にも届かない

「これ以上、苦しむくらいなら――」

そう言った君の瞳には、すでに涙が乾いた後が残っていた。

その目を見て、僕もまた同じ気持ちだったと、初めて心から思った。

この世界で生きることが、ただ無意味に感じる夜が続いた。

逃げ場のない孤独が、僕たちをそっと追い詰めていく。

誰にも理解されない痛みを抱えて、ただ、君だけが分かってくれた。

君も僕も、気づいていたんだ

もう、ここにはいられないってことを

孤独と絶望が心を蝕んで

光のない場所でただ彷徨うだけの日々

「一緒に行こう、あの空の向こうまで」

君が小さな声で言ったその言葉に僕の心は妙に落ち着いていた。

僕はただ頷いた、何も迷わずに

だって、君さえいればそれで良かったから

「次に生まれても、また一緒にいようね」

君の小さな声が、静かに闇に溶けていく。

僕も頷き、ただその言葉に縋るようにして、君を見つめる。

深い闇の中、固く結んだ手を離さないようにしてふたりで身を投げた。

苦しみも悲しみも、全てから解放される瞬間

冷たくなる体が、どこか心地よくて

この世界から消えていくことが、怖くなかった

二人だけの世界に辿り着いた気がした。

だけど、最後に君が涙を流していたこと

それだけが今も心に残っているんだ

もう一度、あの日のように笑えたなら

僕たちは違う道を選べたのだろうか?

けれど、今はただ静かに眠るだけ

君と二人、この永遠の闇の中で

どこにも行き場のなかった僕たちが、ついに静けさの中で見つけた、永遠の居場所だった。

そして、心が安らぐその瞬間、僕たちはようやく全てから解放された。

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