いつかこの日の景色を願って
純白に包まれた十字架を頭上に見上げる。
暗黒に包まれていた亡き十字架は胸にしまい込んだまま、この真っ白に包まれた衣装を様々な想いで彩る。
6月というこの時期に似つかわしくない快晴の青空はこの場所の主役となる人物を祝福していた。
そう、この日、とある二人は————
ある時、夢に見た光景があった。
そこには建物すらなく、人のいるような気配もなく、ただひたすらに地平線が続く。
重圧も、苦痛も、非難も悲哀も何もない解放された景色。そこにいるのは、私が一番傍にいてほしいと願った人。
いつか二人だけの世界に行くことができたら。
世界に二人きりになれる場所なんてなかった。
重圧も苦痛も伴う選択の連続だった。
誰かが幸せになるには、誰かが不幸にならないといけない運命だった。
けれども、運命に逆らうことを選んだ。
苦痛も悲哀もすべて受け入れる覚悟を持った。
その覚悟を持てた理由はたった一つだった。
静まり返った式場に、男は独り祭壇で佇む。
観衆の目は男に向かっている。
ただ男は、真っすぐと、入り口の扉をみつめていた。
————瞬間、鐘がなる。
静寂を突き破る甲高い鐘の音が会場を埋め尽くした観衆の耳に入る。
そして、扉が開き、純白に身を包む女が姿を見せる。
ヴェールを開けた女の目線はただ一直線に、祭壇にいる男をみつめる。
傍ら、女の母と妹の目にはその凛々しく成長した女の姿が映る。
どんな苦しみも乗り越えてきた。どんな幸せも共にしてきた。
家族のあるべき姿を探した。
今、祝福を持って、家族から巣立ち男のもとへ向かう。
母の手を取り、真っ赤に染まるヴァージンロードを歩く女の口は堅い。
だがしかし、女にとってはこの道をあることこそが、最期の試練であるようで、重く窮屈なドレスが歩くことさえも困難にさせる。
固く唇を噛み締め、一歩ずつ確かに進んでいく。
この道を歩くことの重さを噛み締める。
黒い十字架が背負った悪夢を振り払う。
二人に待ち受けているのは、二人きりの世界を見せた黒い十字架の幻想ではなく、大勢に祝福される白い十字架の未来。
一生かけて、君を守り抜く。
その言葉に乗せて、二人はそっと唇を———




