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第5話② 迷惑な迷路

 俺はその後社会、英語とテスト科目である問題を解いていく。

 問題ごとに迫ってくる人影は半分ずつ減っていっている。

 そのため英語が終わった時点では追っ手は一人だけである。

「追っ手は一人だけだしあと少しで学校に着く。」

 早めに学校を出ていたためどうやらテストに間に合いそうである。

 住宅街を抜け鬼門である橋に差し掛かる。

 この橋を超えられれば学校はすぐである。

 橋のゴールには奴がいた。現在の状況を生んだ元凶。

 後ろから追っ手が迫っているため後戻りは出来ない。

 ここで奴と決着をつけなければならない。

「どうせ、お前も問題を出すんだろ。来いよ、解いてやるから。」

「低脳がイキがるなよ。最終問題は激ムズだぞ。」

 仁王立ちで待っていたその姿は初めて会ったような雰囲気であった。獣を狩るような目をしている。

「問題、始めにいた追っ手の人数は何人?」

 え──? 一瞬思考が停止した。

 今までは問題集に載ってる問題を出されてきたが今回は違う。それに今までは二択の問題であり、道を知っていれば逆算で答えが分かっていたが今回は違う。

 単純に数数え問題、記憶問題である。

 頑張って記憶を探るが人数なんて数えてなければ覚えていない。ただ多かったことしか覚えてない。

「卑怯だぞ、こんな問題分かるはずがない。」

「いや、この問題は解けないはずがない。ただ、ヒントはやらないとな。気づいていると思うが問題を解くたびに追っ手の数は減っている。」

「そんなの見ればわかる。ヒントくれ!」

 当たり前だろ。あんなにぞろぞろ迫ってたのに今はもう一人だけだ。

「毎回人数はぴったり半分ずつ減っていっている。これでどうだ、分かっただろう?」

 それは勘づいていたがこれがヒントになるのか?そのヒントだけで解けるのか?この問題は。

「考えろ考えよ。お前に足りないのは思考力だ。今までやってきたことをすれば良い。」

 今までやってきたことだと?

 追っ手から逃げることか?問題を解くことか?正解の道を進むことか?ここで奴と闘うことか?

 色々考えても答えが出ない。答えがないのか?答えまでの道筋すらわからない。

 違う。答えはもう出ている。

 問題を解くのは何より答えを出すだけじゃない。全ての問題が3×5=?だけでない。

 ?×5=15という問題もある。

「つまり、俺が道を知っていて答えの方に進んだように、追っ手の人数もそうやって逆算すればいい。」

 奴は少し驚いた顔をした。結構顔に出やすいタイプだから正解である。

 だが、どう計算する。半分ずつ減っている場合どうすればいい?

 ──半分ってことは元々の人数を2で割れば良いのか。

 元々の人数を?とすると、?÷2で出た答えを問題の数繰り返し、今いる人数である1になれば良いのか。

 問題は、算数、国語、社会、英語の四科目。4回繰り返せばいい。

 ということは、?÷2÷2÷2÷2=1。

 ただこれをどうやって計算する?今までは左から右に順々計算すれば解けた。

「また、短絡的になってないか?逆に考えろ、逆に。」

 逆?逆にどう考える?元いる人数が分からなけば人数を減らしていくことはできない。という事は──

「減らせなかったら、増やせば良いのか!」

 今いる一人が英語で二人に。二人が社会で四人に。四人が国語で八人に。そして八人が算数で──

「十六人。答えは十六人だ!」

 今更であるがここは橋の上であった。車は橋のつなぎ目で、がたんと音を立て、歩道では子供が転んで泣いていて、下では川が風の勢いによってザァーと靡かせている。

 俺は周りからよく周りを見れる子であると言われる。人が泣いていたら近付き声を掛け、いじめを受けてる子がいたら寄り添い、それは無意識でできていた。しかし今回は子供が泣いていても気づくことができず、車の気配すら感じず、橋の上にいたことさえ忘れていた。だが、それは悪いことで無い。俺は今までボーと生きてきた。考えることをせず、覚えることをしてこなかった。社会はこうであると。それは偶然であり、意味はないから覚えなくて良いと。

 たが、それは違った。今の社会はいくつもの過程があって出来ている。偶然でなく必然であった。?×?=15ではなく、3×5=?であった。

 初めて哲学的な考えをした俺は頭がパンクして真っ白になった。

「ボーとしてないでいそげ、テスト間に合わなくなるぞ。」

「……ということは……。」

「正解だよ正解。余計なことは考えるなよ。今はテストに集中しろ。ほら、さっさと行けい!」

 俺はお礼を言い、ダッシュで大学に向かう。

 彼はそっぽを向き川を眺める。こいつ意外とツンデレかよ、面倒くさいなぁと思った。


 あとあと考えてみると、彼は俺に問題の解き方を印象付けるためにあんなことをしたのだと思う。流石にあんなことがあったら忘れるはずがない。

 ただ、奴が邪魔したかったという点は間違いかどうか定かではない。

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