第5話① 迷惑な迷路
7月下旬、暑さが日に日に増していく季節。だが、それ以上に熱い闘いが俺たちを待っている。
学生にとって味方でもあれば敵でもあるそれは、期末テストだ。
夏と冬の期末テストの順位によって俺たちの成績が決まる。特に一番か一番じゃないか、ビリかビリじゃないかで大きく異なる。
俺にとってビリかそうでないかは死活問題である。今回からはね。
俺はここ三年間ビリを取り続けてきた。噂によると三年間ビリから二番目を取り続けてきた人がいるらしい。つまりこのテストで、もし八位以上取れれば逆転の可能性がある。その人がビリならね。
「今日はなんだか顔に気合いが入ってるでないか、楽くん。」
「今日からテストだからな。」
彼は知り合いのO君。ストーカー気質でいつも俺についてくる金魚の糞みたいな人。
まあ、彼のおかげで変な人に襲われることも無くなったから助かるよ。彼の方がよっぽど変人だからね。
「なぁ、テスト受けなかったらどうなるだ?」
「まぁ、必修科目じゃなければ特に問題ないが必修科目なら恐ろしい事が起こるな。」
恐ろしい事ってのは皆さんのご想像にお任せしますよ。でも、なんで彼はこんなこと聞くんだ?
「じゃあ大学へは行かせないぜ。」
「へぇ?」
おかしなこと言うから変な声が出ちまったぜ。
あれ?あいつらは誰だ?
目の前には黒いスーツを纏った集団がいる。見る限り15〜17人くらいだろうか。
「まさか、お前!俺にテストを受けさせない気か!」
「行け!お前ら!鬼ごっこだ!」
俺は今まで通ってきた道に迂回する。
大学までの道のりはいくつかある。俺はこの辺の地形は詳しい。だが、一つだけ橋がある。そこを抜けられれば良いのだが──
「こんな事して何になる!」
流石に俺も怒るわこんなの。俺が嫌いなのは自由を奪われることだ。
住宅街を逃げ回る。T字路に差し掛かる。なにやら紙が貼ってある。
問題
3×5=?
右 十四
左 十五
九九を学んだ俺にとっては楽勝問題だ。
当然左の方向へ進む。
少し進んだところに再びT字路に差し掛かる。
問題2
楽は永秀のドレイである。
カタカナを漢字で表すと?
右 奴隷
左 土鈴
俺は悪いが国語は得意である。特に漢字は好きで漢検2級は持っている。当然右だ。
俺はお前の奴隷じゃねぇーよ、とツッコミたかったがやめておく。テスト終わったらしばく。