第1話② 格差社会
ドカッ!
鈍い音がした。
暗闇から突如現れた何者かが武彦の背中を思いっきり蹴った。
「こんなところで座ってるから蹴っちゃったじゃないか。」
明らかに故意に蹴った。
しかし、武彦は反論はしない。いや、出来ないのだろう。なぜなら自分は最低評価の赤。下の人間はおらず上の人間しかいない。
「す……すいませんでした!」
武彦はひたすら謝り続けた。血が出るほど額を地に擦り付けた。
「お前、わざと蹴っただろ。謝れ。」
楽は考えるよりも先に口が動いていた。楽の悪い癖だ。
「俺のことは気にしないでいいからどっか行ってくれ!」
武彦は左手を振り、楽を追い出すジェスチャーをする。
だが楽は一歩も動かない。ただひたすら楽の前に立ってるやつの目を睨む。
「言ってくれるじゃねぇか。で、君は何色?」
「色なんか関係ないだろ。俺は俺だ!」
「馬鹿か君は。この社会のルールも知らないのか。」
「……この社会のルールはさっき彼におしえてもらった……。」
お互いただ睨み合うだけの膠着状態が1分ほど続いた。
その理由は互いに相手の色が分からないからだ。相手の色がもし自分よりも同じ、もしくは上だったら……。
そんなことを考えていたらやつから仕掛けてきた。
「俺の現時点での色はシルバーだ。だが来年にはゴールドになっているだろう。」
そう言ってやつは長い袖を捲り、腕にある銀色の時計を見せつけた。
彼の証言は偽りなかった。
「ゴールドランク……。それに近い人物が今でも存在しているとは。」
「ゴールド? そんな色あったっけ?」
「君には必要ないことだと思って言ってなかったが、実はシルバーより上のランクがあるんだよ。」
横槍を入れる楽に再び丁寧に説明する武彦。楽は、最初の一言に少し苛立ちを感じたがちゃんと説明を聞く。
──ゴールドランク───。
それはこのカースト社会において頂点に位置する最高ランク。
手に入れるためにはシルバーランクゴールドラインを五つ手にしなければならなず、この世で未だ3人しかいない。
「俺の色を教えてあげたんだ。君の色を教えてくれないかい? 君は金色?それとも金に近い銀色?」
永秀は楽を睨み付ける。
「君の色を教えてもらったし、教えるとするか。」
そう言って楽は腕をまくり奴に見せ付ける。
奴は一瞬口角を上げたが、その後驚きのあまり目を見開き、口を開けてしまう。武彦も同様に。
「レッドランクにブラックライン。それが4つ。金に近いどころか黒に近い男だと⁉︎」
奴は大声で言った。
「上には上がいる。そういう言葉があるように、下には下がいるんだぜ。」
楽はちょっと格好つけて言ってみた。しかし、周りの反応はなく顔が赤くなった。
「おいおい、お前みたいなやつが外で歩いとはすごい度胸だなぁ。買い物か?」
嘲笑うかの如く腹を抱えて笑う。
「いや、これから大学なんだが。」
キョトンとした顔で答える。
男性は少し表情が変わった。
「おまえ、大学通ってるとか正気か?」
「俺は、大学生だから大学に行く。それだけのことだが?」
何を普通のことを聞いてるのか? 楽は澄まし顔で答える。
「今通ってる大学のランクは?」
「多分、俺が通えるってことは一番下なんじゃないかな?」
現代社会では大学進学を希望すればどんな成績であれ最底辺の大学は通える。ただその大学から就職した人は最優秀生徒だけである。
「お前、成績はどうなんだ?」
「三年までずっと最下位を取ってるぜ!」
キリッと、キメ顔で言う。
フハハハハと、笑い声が漏れる。
こいつは根っからのバカだ。救いようがない。
「気に入った。今回は見逃してやる。たが、必ずお前を殺す。」
下をペロッと出し、目は血走っている。
どうやら俺は変な奴に気に入られてしまったらしい。