第7話 病みの止み
武とファストフード店で別れてから半月が経ったが、それ以来彼と連絡が取れなくなった。体調不良で寝込んでいるのかと見舞いに行ったが家におらず、入院していると言われるが病院にもいなかった。
心配で勉強が捗らずあれから勉強を全くせず過ごしていた。その上、期末テストの成績発表があり、追い討ちをかけた。
成績は抜群に伸びたが結果はビリ。ビリ二位との差は未だ百点以上もあった。
更に追い討ちをかける事態があった。今までビリ二位であった人物が今回は十も順位を上げた。これにより、俺は最終テストで必ずビリから二十位以上をとらなければならなくなった。
俺は今まで奴の期待を裏切ろうと勉強してきたが、なんだか面倒臭くなってきた。なんのために勉強してきたのだかわからなくなってきた。
そういえば奴もゴールドリングを手に入れるために必死だった。奴はどうだったのだろうか。
そんなことを思い耽ってその日は終了した。そんなことが数日続き、夏休みは残り一週間となった。
プルルルル。
調べ物や暇つぶし用に使っている携帯電話が珍しく震えた。電話先を見ると『奴』と書いてある。スルーする。これよく使うダジャレね。
鳴り止み少し経つと再び携帯電話が鳴る。『あやか』と書いてある。
出ることにする。しかし、第一声は彼女の声でなかった。
「どうして僕の電話には出んわなんだい、楽くん?」
俺と同じようなことを考えるんじゃねぇ。俺よりもよく使うダジャレ言うんじゃねぇーよ。恥ずかしいわ!
「人の携帯で釣るとはお前誘拐犯じゃねぇよな。」
「酷いことを言うな。彼女に許可をもらって使っている。」
こんな時期になんで電話してくるんだよ。どうせあと一週間で会わなければならないってのに。
「どうせ今頃、落胆してつまらない生活を過ごしているだろうと思ってな。彩花から言いたいことがあるらしい。」
そう言ってあやかに電話が移った。声が聞けるだけで安心した。何もされてないようだ。
「らっくん。元気?気になってらっくんの順位も見ちゃった。ごめん。勉強も忙しいと思うけどリフレッシュも必要だと思うの。」
「だから……、その……。」
言葉に詰まっている。俺のことを気にしているからか?落ち込んでいると思っているからか?
「安心しろ、気にするな。俺は落ち込んでないし、勉強もしてない。」
「それダメじゃん!」
キレのあるツッコミをありがとう。
「らっくんも誘おうと思ったのになぁ。」
小声でボソボソ言っていたが、今のマイクの精度は凄いのかよく聞こえた。逆にさっきのツッコミは適切な音量で聞こえた。今の技術すごい!
というのはどうでもよくて、
「何に誘おうと思ったのか?」
「う、海に……。」
自信なさげに話す彩花。
「悪いな、前にも言ったが海やプールには行けない。」
「だ……だよね。」
苦笑まじりのセリフに少し心がいたむ。気を使って遊びに誘ってくれてるのに断るのは辛い。
「それじゃあ、水族館ならどうだ?」
水着も要らないし、水に入らなくて済む。海やプールとは全く異なるが、夏にはぴったりな場所である。
ダメ元で提案してみたのだが、彩花はいいよ、と賛成してくれた。
集合場所や時間を決めて電話を切った後、支度を済ませて家を出た。