第1話 異世界転生
突然、眩しい光が私を襲った。
驚いて目を開けると、そこには荘厳な雰囲気が広がった白い教会の中にいた。
光が差し込む窓や明かりがないのに、部屋や物自体が幻想的な輝きを放っているみたいだった。
現実にはあり得ない光景を見て
(あぁ、死んだのか、と理解した)
それと同時に胸を圧迫されていた重苦しい気持ちと
思考が鮮明になっていく。
毎日、鞄にはボイスレコーダーを仕込んでいた。
あの事件の日に証拠として提出すれば上司の間違えだと分っただろう。
それでも確証は無かった。
咄嗟に言い出すには5000万円という大金が怖かった。
だから家に帰ってボイスレコーダーを確認しようと思った。
でも、その前に相談したかった。
この痛みを理解して欲しかった。
駅前のトイレで携帯電話で―――に、相談したら
したら…、そう、
ドラマとかでは良くあるシーンだった。
そんな事を言われても、そんなひどい―――から言われた所で
逆に良かったと私なら思うけどな、とか見ていて思っていた。
でも、実際は違っていた。
ふと、頬を撫でる、今も涙が流れていた。
「ブラック企業でも何でも、今辞めたらどうするの!」
「次の就職先決まってるの!? 決まってから普通は辞めるでしょ!」
「面接で1年も会社にいない人なんて採用されないに決まってるわ!」
「パワハラ? あなたが問題あるんじゃないの!?」
「5000万円!? 何てことしたのかしら、この――は」
「あなた何て――――良かった!」
頭の中で、――の言葉が溢れてくる。
自分の心を守る為か、――など言葉が出てこない事もある。
ものすごい精神的に病んでいる時に、ものすごい精神的に病む事が
重なると人間の記憶って、本当に飛んだり無意識になるんだなと思った。
電車で最寄り駅で降りようとしても、何故か2~3駅通り過ぎたり
赤信号だけど、無意識だから何も考えられず渡っていたり。
でも、私を縛るそれらはもうなくなった。
静かな足音が響く中、教会の奥深くへと進んでいくと、ひときわ輝く光が目に飛び込んできた。
その光の中を眺めていると、段々と光が収まり目に入ったのは女性の姿だった。
(美しい…)
と思うのと同時に目の前のソレに意識が取り込まれていく感覚に陥っていた。
ソレは人間というより造形が整いすぎて誰かが作った人形かと思う位だった。
真っ白な髪と真っ白な肌、真っ白なローブ。白い猫耳。白い猫のしっぽ。
そして何もかも真っ白なのに1つだけ色がある、吸い込まれそうな赤い目。
通じるか分からないけれど、挨拶をしてみる。
「こんにちは」
目の前の女性が答える
「こんにちは、楽にして下さって大丈夫ですよ」
良くある死んだら神に会えるアレかと思い聞いてみる
「女神様ですか?」
「私は女神ではありません、天使の御使いです。
女神は多次元宇宙の総括者です。上位の天使達が集まり管理しております。
地球を含む1つの宇宙毎に中級の天使が、その宇宙の星々の1つである地球に下位の天使が派遣されています。
天使はそれぞれ御使いを創造し、実務をさせています」
「ここは死後の世界なのですか?」
「いいえ、人々が死ぬと星々や宇宙に魂は循環していくのですが、ある一定数を超えると
アストラル次元のエーテル量が増える為、この場所は別の宇宙に魂を橋渡しする役目を担っております」
良く分からないが、天国の容量が一杯の為、魂の移動を担う事務所の受付みたいな感じなのかな。
「天使の御使い様は一人で全員の魂を管理していらっしゃるのですか?」
「いいえ、私達御使いは沢山いますし、サポートする者もいます。
貴方たちが猫と呼んでいる生き物です」
まさかの猫がサポートしていた。
犬ばかりの所で亡くなって、そこでの達御使い様に会ったら犬耳になるのだろうか?
それは疑問に思ったが、やはり今後の事を聞いておくべきだろう。
「魂を橋渡しと今聞きましたが、もしかして私転生するんですか?」
「はい、別の宇宙に転生させて頂こうかなと思っています」
「転生特典と言えばチート技能を貰えると聞いたのですが」
「残念ながらそれはできないのです
転生特典を差し上げても、バグを使用した不正利用や
自堕落な生活を送りますと言いながら、規格外の道具の流出をしたり
俺何かやっちゃいましたか? と言いながら自国以外の国を滅ぼしたり
最近では、神をも恐れずうち滅ぼしたとか、
一個人が持つには大きすぎる力が問題となっていて
今では、転生特典はあげないように上層部から止められています」
「そしたら何も貰えないのですか?」
「引き継げるのは自身の能力のみ、この場合記憶ですね
翻訳機能は脳に負担が掛かる為、転生先で覚えて頂ければと思います
また、宇宙が異なりますので色々な法則が変わります。
レベル概念やスキル、魔法、といった物がそこではあります」
転生してチートで私TUEEEはできなさそうだ。
でも、もしアニメや小説の世界のように
異世界に行ったら魔法を使ってみたいと思っていたので楽しみでもある。
問題があるとすれば、安定した職種に着ければいいのだけれど…
「それでは転生を開始します…いってらっしゃいませ」
そういえば、転生…って0才から…?