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君は僕じゃない「僕」を好きになる

作者: 一色 良薬

 このご時世。芸能関係者の大抵が個人SNSアカウントを持ち、ファンに向けて宣伝や生活の一部を覗かせたり、生ライブ配信を行って半交流的時間を共有していたりする。

 かく言う僕もその一人だ。タレントとして日々出演する番組の宣伝や、モデル掲載される雑誌の発売日のお知らせや、出演するドラマの放送開始日などをポストし、ファンから与えられる指先からの愛を受け取っている。

 投稿に熱心なコメントを残してくれる人。

 かかさずファンレターを送ってくれる人。

 事務所管理のSNSアカウントのDMに「結婚して下さい」と毎日書き込む人。

 批評とは言い難い、攻撃的な誹謗中傷をわざと送り続ける人。

 良くも悪くも僕の中で印象深く記憶に残っている。名前とアイコンだけで「あぁ“あの”人か」と思える程度に──認知というらしい──僕の脳内に“彼等”が住み着いている。

 その中でも異色を放っている人物がいる。


“ハヤトがご飯しっかり食べているか心配。ご飯を私が作ってあげたい”

“ハヤトの服って首回りが垂れているのばっかりだから、私がお金を出して新品を買い与えたい”

“ハヤトをただただ養いたい。私は遠くから見ているだけでいいから。毎日幸せに生きてほしい”


 Yというアカウント。ハヤトについてただ淡々と呟かれているものだが、僕の名前はハヤトではない。

 ハヤトは僕がドラマで演じた売れないミュージシャンだ。

 Yは僕がハヤトのドラマについて書く、必ず「ハヤトにしてあげたい」ことを反応してくる。

 ただ反応してくるだけなら異色ではない。Yはハヤトと僕を切り分けて、ハヤト単体を推しているのだ。

 “演じて下さりありがとうございます”や“ハヤト役ハマっていました”なんて感想はなく、ただただハヤトが現実世界にいるという体で呟く。

「……僕のことなんか見えてないんだよな」

 それだけ演技が良かったのだろうと思えば気分もいいが。

「僕のファンになればいいのに」

 ハヤトはこの世にいないのだから。

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