同日 午前6時2分 天気 雨
どうやらこの日は、不幸中の幸いこそあれ、散々な目に逢うべき日らしい。
午前4時頃、雨が降ってきた。
雨の雫は降り始めこそ穏やかで、楽観的に、振っても大した事にはならないだろうと見積もるのがいけなかった。
ぽつりぽつりと降り始め、次第に森の木の葉の一枚一枚を叩きつけるように、ざあざあと土砂振りになって襲いだしたのだ。
それだけならまだしも、元々柔らかい地面は、いよいよぬかるみとなって溶けだし、私の足をさらい、転ばせていった。
おかげでコートもスーツも全て泥まみれに。
更に、私は散策に当たって、収穫を少しでも、と思い、あそこに近付いてしまった。
どうやら森は山へと続いているらしく、斜面になっている箇所を見つけたのだ。
何を思ったか、疲労による高揚感があって、私はそこに向かって、進みだした。
そして、強風に晒され、転びかけたかに思えば、私は木に捕まろうとした刹那、枝は折れて、足をくじいてしまった。
泥だらけの体は、斜面を転がり落ちていき、木の幹に腰を強くぶつけてしまった――――不幸続きで仕方ない。
強風は激しく、私は腰をぶつけたついで、その幹にしがみついて、やり過ごす事にした。
坂と平らな地面の境目に生えた木は、しなりながら、雨をよけ、私の足だけがなびく。
強風が止まり、雨だけとなって、やっと這う這うの体で、木から崩れ落ちるように力を徐々に抜いていくと、また最悪の事実に気付かされる。
雨の当たった個所が、痛痒いのだ。
長時間当たった、私の手に至っては真っ赤に染まっており、私のうなじから頬にかけては、先程の強風と気の動転で気がつかなかったが、痛くてたまらないのである。
まさか、酸性雨だろうか。
そう気が付けば、私は涙を流していた。
もうこんなでたらめな島に、まともな生物なんて居る筈がない。
せいぜい餓死して、あの海岸の骸のようになっていくのが関の山だろう。
悲しみにくれ、散々泣いて、時間は今に至る。
今は、辛うじて足を引きずって歩くことができるが、精神的にも、書き続けるのは限界があるかもしれない。
だが、今はその時の事を考えるな私よ。
今はただ、生きのびる事だけを考えろ。
そして、最悪の願いだが、どうかこの私の手記が、生きた証となって再びの犠牲者の、助けとなれるように。
まずは、住居だぞ。