訪れる危機
ガタガタと揺れる汽車の中、窓際の席に座った俺は、外の景色を見ながら黄昏ていた。
最初は山や田んぼの多かった風景は、王都『グラエボ』に近くなるにつれて、街や人の営みの様子などが見えてくるようになった。
「……来たぜ、グラエボ」
ここが俺の夢のスタート地点。
俺の歩みはここから始まるのだ……!
汽車がグラエボに到着したことを確認し、下車した俺は、王都の光景に圧倒されていた。
どこを見ても人、人、人。孤児院とは比べ物にならないくらいの活気に満ち溢れたその光景は、大陸中を探してもあまり見られないだろう。
大陸中から様々な物が集まってくる王都には、当然大陸中の人間が集まっている。
『サンメラ』からは、海産物、『マナーゲル』からはスパイスなどの香辛料などといった具合に、様々な物が王都には存在する。
唯一『レリアテ』だけは、王都に来ていないがそれも仕方のないことだろう。
『フィオナ』と『レリアテ』の関係は”あの事件”以降完全に冷え切っている。
このまま王都を観光したい気持ちをグッと抑えて、持ってきた王都の地図を広げる。
目的地である学園の位置を確認した俺は、人の川に溺れながら歩き出した。
「でっけぇ………」
学園の目の前にたどり着いた俺は、その威容のある建物に圧倒されていた。
まるで王様の居城のような立派な建物は、誘導役の教員らしき人物と、その周辺に集まっている受験生がいなければ学園だと分からなかったかもしれない。
人混みを掻き分け、誘導の声を頼りになんとか受付に辿り着くと、そこで受験票を渡す。
「確認完了致しました。受験番号は4105番です。矢印に従って、ご自身の番号が書かれた学科試験会場まで移動してください。」
受付のお兄さんからそう言われた俺は、言われた通りに床に書かれた矢印に従って会場へと向かった。
グラストボーン学園の入学試験は、学科と実技の二つに分けて評価される。
異能の力が試される実技試験の難しさに注目されがちだが、学科試験も他の高等学校に比べればかなり難易度は高い。
流石大陸一を謳う異能者教育機関。異能が優れているだけでは入学することは出来ないということなのだろう。
矢印に従って会場にたどり着いた俺は、自分の受験番号が書かれた机に座った。
中はすでにかなりの人がおり、試験特有の張り詰めた雰囲気が漂っている。
しばらく待っていると時間になったのか、試験官が試験についての説明を始める。
そして、説明が終わると複数の試験官の手で解答用紙と問題用紙が配られていった。
試験官の「始め」という声と同時に問題用紙を見た俺は、そこで全身に雷を受けたような衝撃を受けた。
明らかに覚えのない単語の羅列、見たこともないグラフの数々…。
つまり俺には問題用紙の最初に書かれた問題が、全く分からないのだ。
身体中から嫌な汗が噴き出す。不味い、これは不味すぎる。
めちゃくちゃに焦った俺は、とりあえず分かる問題を探して解いていく。
幸い分かる問題もいくつかあった。
ただ、最初のどうしても分からない問題のことを考えると、正答率は良く見積もっても7割いくかどうかといった所だ。
学科試験でこけてもある程度なら実技試験でカバーできる。
だが、明らかな不合格を覆すほどではない。
そうこうしている間に試験官の試験終了を告げる無慈悲な声が聞こえた。
なんとか答えを捻り出そうとしたが、分からないものをいくら考えても分かるわけなかった。
―――こうして、俺の夢への記念すべき第一歩は最悪に近い形で始まった。
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