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そして街へ

後ろを警戒していたケンがようやく腰を下ろした。

全身擦り傷だらけでボロボロになっている。


大丈夫かな?ケンの元にそっと歩み寄るが、なんて話しかければ良いんだろう。

出発前にひどい態度を取っていたので声をかけづらい。


「シャリー」

疲れがピークに達しているためか力のない声でケンに呼ばれる。

「ケン、大丈夫?」

「うん、擦り傷くらいだからちょっと痛いだけ。シャリーも怪我は無かった?」

「うん、私は全然平気だよ」


ケンと目が合った。その時ケンがヴァーリアンラットと対峙した時の光景がフラッシュバックする。

そしてその時の思いが込み上げてきて思わずケンに抱きついた。

「ケンが死んじゃうかと思った」

「うん」

ケンは頷き優しく頭を撫でてくれる。

「なんであんな事したの。。。」

「守りたくて」

「死んじゃうよ」

「ごめん」

ケンの胸に顔を押し付け、抱きしめる腕に力をこめる。

「俺、ちゃんと守れたかな」

「うん、いつも守ってもらってるよ」

「そっか。。。」

ケンは頭を撫でていた手はそのままにもう片方の腕をシャリーの背に回し抱きしめ返す。

バシャバシャと船を漕ぐ音が耳に心地良い。

ケンの温もりを感じ、ようやく助かったんだと実感した。


「いつまでイチャついているんだ!!そろそろ岸に着くぞ!!」

むぅ、良いじゃないかちょっとくらい。そう思ったが、小さい船だ。みんなから注目されていた。

急に恥ずかしくなり、抱きつくのをやめてケンの隣に座り直した。

チョンと指先が触れる。こっそりと手だけ繋ぐ。まだ岸に着いてないしこんくらいは良いよね。


船が川を渡りきり船着場に到着する。

「降りるぞ、足元気をつけろよ」

子ども達が護衛の男達のフォローを受けながら下船していく。


「ミカ姉もそろそろ降りよう」

船縁ふなべりに背を預けのんびりと座っているミカ姉に声をかける。

しかし返って来たのは「うーん」と低く唸る様な声だった。


「ミカ姉」

そばに近寄り手を取る。手が熱い。

「ミカ姉!!大丈夫!!?」

慌ててミカ姉のおでこに手を当てる。やっぱり熱い。


「誰か!!ミカ姉が!!!」

ケンと護衛の男が駆けつける。男は額に手を当て熱を測る。そして右足のズボンの裾を上げ傷口を見た。

「チッ、傷が化膿してやがる。それで熱が出てんだろうよ。

 早く医者に見せないとな」

そんな。。。ようやく安全なところまで来たというのに。。。


「とにかく街へ急ぐぞ。この時間なら途中で馬車に乗せてもらえるかもしれん」

護衛の男はミカ姉を背負って船を降りる。私とケンもその後に続く。


ここから街までは徒歩では5時間程度かかる。

ましてや子どもと怪我人がいる。もっとかかると思って良いだろう。


「定期船に乗るために来る馬車を捕まえるぞ。川の向こうにはあのネズミどもがいるんだ。それを教えてやれば街へ引き返すさ」

確かにそうかもしれない。そこにミカ姉だけでも乗せてもらえれば。

「まずは街道に出るぞ。ここからだと30分程度だ」


護衛の男がミカ姉を背負い。みんな歩き出す。

5時間歩くと言われれば心が折れていただろう、でも30分歩けば馬車で街へ行けるかもしれない。

小さい子も泣き言を言わず歩いている。


街道に着くと、しばらくして狙いの馬車が通りかかる。

もとより利用客の少ない馬車だ。事情を話すとすんなり引き返すことになった。

ミカ姉と案内人の男、それに小さい子達と私とケンを無理やり馬車に押し込めた。

元々の乗客も子ども達を優先してくれて降りてくれた。そして入り切らなかった護衛の3人も含めて、その場で次の馬車を待つことになった。


馬車は荷台にほろをつけた簡易的なものだ。

ミカ姉が横になって、他は膝を抱えて座っている。

もちろん、私はケンのそばだ。

定員オーバー気味なので引っ付いても仕方がない。

むしろ小さい子達にスペースを開けるため、より引っ付かなければならない。


馬車でもまだ街まで距離がある。

ゴトゴトと揺られ、ほろの隙間から見える景色を見る。


これから慣れない土地でお母さんもお父さんもいない生活をしないといけない。

安心したせいか、急にこれからのことが不安になる。

自分の事もそうなのだが、村に残ったみんなの安否も気になる。

ミカ姉の容体ようだいも心配だ。


ケンに不安を打ち明けたい。でも子ども達の前では言えない。

どうしようもなくなり、ケンと繋いでいた手に力が入る。

ケンは握り返してくれる。

それだけで不安が少し収まる。


ゴトゴト、ゴトゴト


馬車は私たちを街まで運んでくれる。

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