フランとソワレの奮闘
「ケン!!!」
ミカ姉の叫び声を聞いて私は顔を上げた。
その目線の先にはヴァーリアンラットの群れに一人で対峙するケンの姿があった。
「えっ」
さっきまでそこにいたはずじゃ。。。
なんでケンが。。。
ダメだ。。。あんなの。。。ケンが死んじゃう。。。
私は咄嗟にセレスに助けを求めようとした。
『お主が魔法を使ったせいで全員が死ぬかもしれん』
セレスの言葉が脳裏をよぎる。
大丈夫だよね。。。前も出来たし。。。
しかし失敗すれば。。。
『魔法はそんな都合の良いものじゃない』
次はケンのお父さんの言葉。。。
でもこのままじゃ、ケンが。。。
あんなに避難することに抵抗したのに。。。結局は何も出来ないのか?
セレスに助けを求めればきっと。。。
失敗した場合は。。。どうなる?
そんな全員死ぬなんてことは。。。ないとは言い切れない。
ケンを助けるためミカ姉達を犠牲にする?
思えば昨日は夢にセレスが出てこなかった。
いつもであれば「小僧の腕まくらはどうだったかのう?」と聞いて来そうなものである。
セレスはまだ私の中に居るのだろうか?居る様な、居ない様な曖昧さがある。
私には出来ない。。。昨日と同じ様にすれば良いだけなのに。。。
「早く船に乗れ!!」
その叫び声で船着場に到着したことに気づく。
「ミカ!!シャリー!!子ども達を船に乗せろ!!」
ミカ姉が子ども達の手をとって荷台から下ろしている。
でも、ケンが!!次々とヴァーリアンラットが押し寄せて来ているのだ。このままだとケンがあの群れに飲み込まれてしまう。
ケンの足止めの結果ヴァーリアンラットの死体で山ができていた。
その山を迂回してケンの横をすり抜けこっちに向かってくる。
「ケン!!後ろは任せろ!!」
護衛の二人が駆け出し対応に当たる。
絶えず襲ってくるヴァーリアンラット。
このままだとこちらの避難が終わっても、足止めしているケン達が逃げられない。
「ヒヒーン」
フランとソワレが声をあげる。2頭の馬から強い意思の籠った視線を投げかけられる。
何かを訴えて来ているようだが。。。
2頭が今にも走り出さんばかりに地面を蹴る。
もしかして。。。私は馬と荷台を繋ぐ金具を外す。
すると間髪入れず2頭が唸り声を上げて走り出す。
「ヒヒーン、ヒヒーン」
挑発するように鳴きながら、ヴァーリアンラットの列に沿って走る。
見えない獲物よりも、そこにある獲物と言わんばかりに2頭に気づいたヴァーリアンラットは馬を標的にした。
自分たちに意識が向いたことを察知するや否や、フランとソワレは捕まらない様に列から離れるように走る方向を変える。
2頭が本気を出して走れば、ヴァーリアンラットなど追いつけはしない。
しかし追いつけるかどうかの速度で走り、後ろ足で土や小石を後方に飛ばしている。
馬の脚力で飛ばされたものだ、土でも無視できるものではない。ましてや小石となると。。。
2頭の後ろはまともに走れる状態ではなかった。
足を止めるたら最後、後ろからくるヴァーリアンラットの群れに飲み込まれる。
そうして2頭の馬が走った後にはヴァーリアンラットの血の跡と死体が点々と転がっていた。




