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避難

俺たちは何も聞かされぬまま、集会場から村の入り口まで移動した。

そこにはそれぞれ1台ずつ荷台を繋いだ馬が2頭いた。


ここでトーリンズ川を越えた先にある街に避難すると説明を受けた。

避難するのは子どもと護衛の3人、それと案内役のみだそうだ。

少ないがそれ以上は荷台には乗らないため仕方ないようだ。


当然子ども達は親と離れ離れになる。それを知った小さな子達は駄々をこねた。

しかし一番抵抗していたのは意外にもシャリーだった。


「ヤダ!!私は残る!!」

「お願いシャリー言うことを聞いて」

シャリーのお母さんが優しく諭している。


「ダメだよ。私がいないと!!」

「お父さんとお母さんは大丈夫よ」

「大丈夫じゃないよ!!またあの魔物が襲って来たらどうするの!!?私たちを避難させるってことはまた襲ってくるかもしれないからでしょ!!」

「そんな心配しなくて平気よ」

「平気じゃないよ!!私がいないとみんな死んじゃう!!」

「シャリーよく聞いて。私たちはシャリーのことが大事なの。だからねお願い。。。」

「違うよ!!私が言いたいのはっ!!私がっ私がいないと。。。ダメなんだよ!!

 私がセレスを呼んだから!!みんな助かったんだよ!!」

シャリーの絶叫が響く。


「うん、シャリーもよく頑張ったよね。だからね。今は言うことを聞いて」

「違う、私の話を聞いて。。。私がいないとみんな死んじゃうんだよ。。。」

シャリーは溢れんばかりの涙を瞳に溜め込んでいる。


俺も避難することに納得できない部分はあった。父さん母さん達を置いて自分だけ逃げるなんて。。。

しかし集会場を出る前に父さんに「お前がみんなを守るんだ」と言われている。

その時は何か分からなかった。子どもの中では俺は年長者になるので、魔物に襲われた時は小さい子達を守るのは当然だと思った。

しかし少人数で避難することを知って、俺の中で守るの意味合いが変わった。

魔物から守る事などほんの一部の役割でしかない。

現状でも全員親と離れることで不安になっている、逃げた先でも同く不安になるだろう。

それに大人は4人しか避難しない。子ども達の面倒を見る余裕などないであろう。

逃げた先でも守らないといけない。具体的には何をすれば良いかなどは分からない。

でも守らないと。。。


シャリーがいまだ抵抗しているため、出発できないでいる。

ここで離れると両親が死ぬかもしれない、それに今まで育ってきた村が無くなるかもしれない。

ここに居たいと言う気持ちは分かる。しかし。。。


「シャリー。。。もう行かないと。。。」

俺は意を決してシャリーの肩に手を掛ける。しかしシャリーはあいも変わらず自分の主張を繰り返している。

俺は後ろからシャリーのお腹に手を回し抱え上げ、強引に荷台に載せた。


「ケン!!ダメだよ!!私がいないとみんなっ!!なんで!!なんで分かってくれないの!!!」

俺も出来ることならシャリーの願いを一番に聞き届けたい。でも今は。。。

「出してください!!」

荷台から降りようと暴れるシャリーを押さえつけながら叫ぶ。

馬がゆっくり歩き出し、徐々に速度を上げ走り出す。

村の入り口が見えなくなる頃にようやくシャリーは大人しくなった。


恨言を言われる。。。いや嫌われることも覚悟の上やったことだ。

しかしシャリーは何も言うことなく俯き嗚咽おえつを漏らした。

この時になって俺はまた間違いを犯したのではと思った。

何度この子を守ると決心した事だろう。。。でも守れた事など一度もない。

今も守りたくてやったことだ。しかし結果は。。。

俺は背を丸め小さくなったシャリーの姿を直視することが出来なかった。


——ドドドッ。ドドドッ。ドドドッ。


小気味良い馬の足音が響く。

漁船がある場所まで着くのに、馬の足であればそんなに時間がかからない。

船着場が見えた頃に。


——ドドドッ。ドタッドタドッ。ドタッドドタッ。


馬の足音に異音が混じりだす。

ヴァーリアンラットの群れがこちらを追いかけている。

森の方から連なる様に列になっている。

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