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翌朝

空が明るくなり、集会場の窓から柔らかな日差しが入り込む。

小鳥の鳴く声が耳に心地よい。

静かで少し肌寒いくらいの空気。そこに暖かな朝の日差し。まだ覚醒前のぼんやりとした頭にはいつもの日常がそこにあるように感じられる。


昨晩あんなことがあったばかりだ。それに魔物も全滅したか分からない。

日常なんてもうどこにもないのかもしれない。


ケンの腕枕で寝たはずが、悲しいかな私の頭は冷たい床の上にある。

腕枕は外されたがケンは私を抱え込むように寝ている。そして目の前には逞しい大胸筋がある。

きっと腕が痺れて、私を起こさないようにそっと腕を外したのだろう。

あーでも、これはこれで。。。

胸元に頭を擦り寄せる。ちょっと匂いを嗅いだりして。。。

良いな。これは良いな。もうちょっと。。。


そうしていると、不意に頭を撫でられる。

「あっ」

やりすぎた。。。ケンが起きちゃったか?

私は少し離れケンの顔を覗き見る。


「えっと、これはその。。。」

何と言い訳すれば良いのか、そもそも私は何をしていんだ!!?

「おはよう」

ケンは眠そうにあくびをする。

「おはよう」

バレてない?私は誤魔化す様に挨拶を返した。


「体が痛いね」

硬い床で寝るとやっぱり体が痛くなる。

上体を起こして首を回したり、大きく伸びをして体をほぐす。


そうしているうちにだんだんと他も起き出してきたようで、挨拶や話し声が聞こえ出した。

「おい!!ケンちょっと上に登って様子見て来てくれや」

ケンがお呼ばれされてしまった。

私から離れ、昨晩と同じようにスルスルとロープを登っていく。


「うわっ!!魔物の死体ばっかり。でも生きているやつはいなさそうだよ!!」

窓から外を見ながらケンが叫ぶ。

「そうか!!俺たちは外の様子を見てくるから、そのまま上から見張っといてくれや!!」

「分かった、でも長時間は無理だよ」

「おう、限界来たらそのへんの若いのと変わってくれや」


口髭の男はケンのお父さんと男衆の一部を連れて入り口の扉へ向かう。

大きなかんぬきを外し、扉を開けようとする。しかし何かつっかえているようで開かない。体を押し付け無理やり扉を少し開ける。そして半身だけ出し外の様子を伺った。


「大丈夫そうだ。行くぞ」

舌打ち混じりに扉の前にあるヴァーリアンラットの死体を蹴り飛ばし外に出る。

扉の前にはヴァーリアンラットの死体が散乱しており地面には血が染み込んでいる。

扉にも凄惨な血痕と夥しい爪の痕が残されている。

昨晩の様子から、集会場の壁は全て同じ様な状態になっているだろうと想像がつく。


まずは侵入されようとした窓のある方の様子を見に行く。

そこには想像通りの光景が広がっていた。

一部が崩れたヴァーリアンラットの死体の山。壁一面に染み渡る血痕と引っ掻き痕。むせかえる様な血の匂い。

襲撃を受けていた最中、ずっと想像していたこの光景。壁一枚隔てた先の光景。


予期せぬ来訪者により、襲撃が収まったことで昨日のことが夢の様にも感じれた。

しかしこの惨状を目の当たりにすると現実を突きつけられる。自分たちが死の淵にいたという現実を。


雰囲気と血の匂いに当てられて、若い男が嘔吐する。

「ちっ、土かけとけよ。

 それにしてもこんだけ死んでれば、もう少ないじゃねぇか?」

カーターが片膝を立てて座り、地面をゆびさす。

「こちらを見てください。逃げた様な足跡があります。

 この感じからすると相当な数が逃げているようです」

「おう、確かにな。しかしまだいるてぇのか。。。」

「そうですね。ともかく村長を交えて早急に対策を立てた方が良いでしょう。

 次の襲撃は耐えれるか分かりません。子供たちだけでも逃したいところですが。。。」

「おい、お前。村長を呼んでこい。トムの家にいるはずだ」

若い男は命令に従い駆け出す。


「学者先生なにやってるんだ」

カーターはいつの間にか持っていた桑でヴァーリアンラットの山を切り崩していた。

「いえ、山の崩れ方が不自然なので」

壁の血痕は窓の近くまで付着しているが、ヴァーリアンラットの死体の山はその半分にも満たない。

そして山は二つに分かれている。

血痕の位置から察するに、出来上がった山が崩れていることが分かる。

しかしその崩れ方が中央部分が消失したような崩れ方となっている。

この異様な崩れ方をした原因を探ろうとカーターは魔物の山を切り崩していたのである。


魔物の山の一部を取り払った先には地面に刺さった一本の無機質な剣があった。

一体の地面には血が滲みて《しみて》いるのにも関わらず、その剣の周りだけは綺麗なものであった。

これを見た瞬間、誰もが昨晩のカーターの言葉を思い出した。


——神様だ

——神様が救ってくださったんだ


誰が言ったのかは分からないが、それを見た全員が同じ考えとなっていた。


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