夜
無理だ!!無理だ!!無理だ!!
何が無理だって!!この状況を説明することだよ!!
なんでセレスは何も言わずに飛び出して良いっちゃうの!!?
一言「外の魔物やっつけてきます」って言ってくれてれば。。。
何も言わずに飛び出して行っちゃったせいで、みんなどうして良いか分からなくなってるよ。。。
状況が分かってるの私だけだよ。。。
これなんか説明した方が良いのかな?
もう大丈夫だと教えたいけど。。。なんって説明すれば良いのかな。。。
うーん。
なんでセレスは外で戦ってるんだろう。壁ごとやっつけちゃえばこんな悩む必要なんてなかったのに。。。
戦ってるところ見えないと何が起きてるか分かんないよ。
ちゃんと戦ってるよね?勝ってるよね?私もちょっと不安になって来たじゃないか。
そんなふうに悩んでいると、ケンがロープを上り窓から外を覗き込んでいるのが見えた。
おぉ、流石だよ!!
これでケンが魔物が居なくなったことを説明すれば、私は何もしなくても良いかも。
それにしてもこんな時にすぐに行動できるなんて凄いな。
そういうところも格好良いな。。。
ケンがロープから降りて来て、口髭の男とケンのお父さんと会話をしている。
遠くてよく聞こえないが、外の様子について報告しているのだろう。
突然口髭の男が大声で叫ぶ。
「おい!!誰かあのガキが誰か分かるやついねぇか!!?」
分かるよ。分かるんだけど。。。なんと説明すれば良いのだろう。。。
魔法でセレスを出したと言えば良いのかな。。。でもセレスも魔法を使ったことを怒ってたし。。。素直に言ったら怒られるよね。。。
「ミカ!!シャリー!!お前達のとこなら、どこから出てきたか見えたんじゃねぇか!!?」
見えたどころか、私が出したんだけど。。。
うー。。。
悩んでいるとミカ姉が先に答えてくれた。
「いや、いきなりだったから。。。気づいた時には居たって感じだったような。
ねっ、シャリー」
こっちに振られるとは思わず、咄嗟に頷ずいてしまった。
それで口髭の男は興味を失ったみたいだが、本当のことを言わなくても良かったのだろうかと心の隅の方に引っかかりを感じた。
その後ケンのお父さんがもう休もうと提案したことで、みんな静かになった。
私はお母さんと一緒になり、床に寝転がった。
ケンがこちらに駆け寄って来る。
「シャリー」
私は呼びかけに応える様に上半身を起こした。
「ん、なーに?」
「いや、何もないんだけど。。。」
何もないと言われても。。。
「一緒にいたいと思って。。。」
ケンは頬を掻き恥ずかしそうに目線を逸らしている。
っっ!!これは。。。ずるい。。。私は身悶えしてしまう。
でも、隣にお母さんがいるのだ。
お母さんの方をそっと見ると、満面の笑みを浮かべていた。
「うん、良いよ」
隣の床をポンポン叩く。
ケンは促されるまま床に座る。
「その。。。怖くなかった?」
「うん、怖かった」
「あっ、えーっと。。。」
ケンは何かを言おうとしたが、言葉にならず目線を逸らした。
何を言おうとしたのか気になる。だけど真剣な表情を見ると聞き返せなかった。
「壁が壊れてそうになって、もうダメかと思ったよ」
ケンはさっき言おうとした事と別の事を口にしている。私でも分かる。
「うん。私ももうダメだと思った」
何を言おうとしたのか分からないが、蒸し返すようなことを言えるほどの勇気はない。何を言われるかドキドキするじゃないか。
「みんな無事で良かったよ」
「本当にそうだね」
「でも、あの子は何だったんだろう?父さんの言う様に神様だったのかな?」
ケンのお父さんそんな事言っていたのか。遠くて聞き取れなかったけど、流石だな。
「きっと、そうだよ」
だって本人がそう言ってたもん。
「うん、あんな状況でも助けてくれたんだから、他に説明しようがないよね」
「うん、うん」
良かった。ちゃんと状況伝わってるみたいで。
「みんなお休みしてるから、静かにね」
そっと上半身を起こしたお母さんから注意された。
「「あっ、ごめん」なさい」
私とケンが同時に謝る。
「そろそろ戻るよ」
ケンが立ち上がろうとしたが、私が服の袖を掴んで止めた。
「一緒にいてくれるんじゃないの?」
私のわがままを聞いてくれ、ケンはその場に腰を下ろす。
「ありがと」
少し気恥ずかしくなり、声が小さくなってしまう。
「うん、もう寝ようか」
私たちは一緒に横になった。
布団も毛布も無く、そのまま床に寝そべり瞼を閉じる。
床はひんやりとして心地よいが、いかんせん硬い。
それに枕は欲しいところだ。
そっと目を開け、ケンの顔を覗き見る。
目を閉じてはいるが、まだ寝てないだろう。
寝ていないので寝顔とは言えないが、言えないが、ケンの寝顔がすぐそこにある。
ケンは自分の手首あたりを枕にして寝ている。
あれ、枕あるな。。。あの丁度良さげな腕を枕にして良いかな。。。
ドキドキ。。。いけない考えが頭をよぎる。
ダメだろう。頭で否定しても、感情がそれを肯定する。
使える枕があって、使わないなんてもったいない。
ダメだ。いや良い。いやダメだ。良い。良いよね。ダメだ。良いかも。だm。良い。良いはず。dm。良い。良い。
理性と欲望がせめぎあったが、理性が欲望に勝てるはずもない。
私はじりじりとケンの二の腕に迫っていった。
もう肘が目前だ。ここを越えればあの二の腕に。。。
えい!!声には出さないが心の中の掛け声と共に、肘を超える。
そこは理想郷。夢にまで見た筋肉の聖域。
「おっ」
いきなり腕に負荷がかかってケンは驚いた声を出した。
私はケンの顔を覗き見た。近い。思ったより近い。
「き、来ちゃった」
恥ずかしさで目を逸らし、何か言わないとと思い呟いた。
「うん」
ケンは小さな声で頷いた。
顔は見れないが、腕の筋肉が強張ったことは分かった。
辛くないかなとも思うが、このままでいたい。もう少しだけ。。。もう少しだけしたら。。。
そう思いながら私は静かに眠りについた。




