出会いその後
「シャリー……よろしく……」
まさか話しかけられるとは思わず、うまく声が出なかった。
失敗した……顔が熱を帯び赤くなっているのが自分で分かる。恥ずかしくて顔を伏せてしまう。
「いい名前だね」
「うん……」
「絵を書いていたの? これは猫? 上手だね」
「うん……」
「よく絵を書くの?」
「たまに……」
最初の失敗を引きずって上手く喋れない。
「他は何書ける? 犬は?」
「犬書ける……」
「すごい。犬見てみたい。書いてみて!」
そうケンにリクエストされて、犬を地面に書いてみせる。
絵を書いている内に少し冷静になってきた。
犬を描き終えたが、そんなに上手くない。いつも小さい子にせがまれて絵を描いているが、その時の方が上手く描けている。
絵の出来前に不安を覚えて、そっとケンの顔を覗き見る。
「やっぱり上手だね」
人好きの良い笑顔を見せケンはこちらを向く。
目が会った瞬間、再度笑顔を見せた。
「やっとこっちを見てくれた」
私は挨拶した時からずっと下を向いていたのだ。
きっと私の緊張を解こうとずっと笑顔で話してくれていたんだろう。
そう思うと最初とは別の意味で顔が赤くなった。
ガチャとドアの開く音がした。
「まったくあの子はどこに行ったんだい。
ケーーン、近くにいるなら出ておいで!!
まだ荷物の片付け終わってないでしょう!!」
ケンのお母さんの声が響き渡る。
「ヤベッ、逃げよう」
そう言ってケンは私の手をとり、茂みに隠れながら「こっち」と移動を促した。
家から離れたところまで行き、ようやく手が離れた。
「危ない危ない、見つかったら怒られるところだった」
ケンの慌てた姿を見て私は少し笑った。
それをみてケンも笑った。
「でも、ちょっと楽しかったな」
「うん、ちょっとドキドキした」
実はちょっとどころでないドキドキ具合だ。
「ここは村のどの辺?」
「うーん……」
どの辺と言われても困ってしまう。
なにせ特徴の無い村だ。それにケンはこの村に来て間もないので集会場近くと言っても分からないだろう。
その時名案が浮かんだ。
「そうだ、村を案内してあげるよ!!」
あまりの名案過ぎて思ったとたん口に出してしまった。
案内する所なんてあるのだろうか? そんな疑問が後から出て来て不安になる。
しかしそんな不安も打ち消すほどの笑顔でケンは返事した。
「ありがとう!! 俺も案内してもらいたかったんだ!!」