外の様子
「おい、ミカ!!ロープはあるか」
いきなり大声で名前を呼ばれ、ミカ姉はビクリと肩を震わす。
「あーっと、そこに一本くらいはあるはずだよ」
そう言って店の商品が保管されている一画を指さす。
「お前ら探しておけ」
口髭の男は若手に指示を出す。
「上の窓から外の様子を見る気ですか?」
カーターが口髭の男に尋ねる。
「あぁ、今はそんくらいしか出来ねぇからな」
「ありました」と若い男が重りになりそうな物とセットでロープを持ってきた。
「おう、気がきくじゃねぇか。そこら辺危ないからどいてろ!!」
ロープを受け取り、ロープの先端に重りをくくりつける。
口髭の男は重りをつけたロープをブンブンと振り回し勢いをつけて投擲した。上手いことロープが梁の上を通り、重りの勢いで梁にロープが何重にも巻きつく。
二度三度引っ張って、登れそうか確認をする。
「誰か身軽な奴はいねぇか?」
これを登れというのか。。。いつ解けるやもしれぬロープで5、6メートルはあろうかという高さまで登るのは。。。
みんな押し付ける様に視線を交わす。
そんな中ケンが手を上げた。
「俺が行くよ」
「おう、確かにお前なら適任かもな。学者先生、それで良いか?」
みんなの視線がケンの親であるカーターに注がれる。
「親としてはやらせたくはないですが。。。仕方ないでしょう」
普段は表情が豊かとは言えないカーターであるが、この時は誰が見てもやらせたくない思いが表情に表れていた。
「落ちたとしても、ちゃんと受け止めてやるからな」
「うん、行ってくるよ」
カーターに返事をしケンはロープに手をかける。
日頃鍛えているだけあって、するするとロープを登っていく。
なんなくロープを登り終え梁の上に乗っかる。ロープを緩めて、梁の端に移動させしっかりと結び直した。
窓は梁の少し下に位置するので、今度はロープを伝って少し降り窓の端に左手をかける。
窓から外を見下ろすが、室内の明かりに目が慣れていたせいで外の様子がまるで見えない。
目をつむり暗闇に目を慣らす。。。再び窓の外を見る。。。少し見える気がする。もぞもぞと黒い影が蠢いている感じがする。
もっと良く見えないか。。。窓に顔を近づけ更に目を凝らす。
どんどんと目が闇に慣れてきて、朧げながら影の輪郭を捉え出した。
黒い影が押し合いながら、のけ合いながら、ひしめいている様がだんだん見え始めた。
しかし遠近感がまだつかめていない。何かがおかしい。
鋭い爪がある前脚で仲間の背を踏みつけ前に行こうとする。しかし更に後ろから来た仲間に踏まれ群れの中に埋もれていく。何重にも。。。何重にも。。。繰り返され積み重なっていく。
その時俺は理解した。遠近感がおかしいのではなかった。ヴァーリアンラットが積み重なって地面よりも近いところにいたのだ。
窓は相当高い位置にある。流石にここまでは届かないだろうとは思う。。。思うが。。。暗闇の中から次々と這い出ては積み重なっていくヴァーリアンラットの影を見ているといずれは。。。
これ以上見ても嫌な妄想を膨らませてしまうだけだ。そう思いそっと窓から左手を離す。
左手をロープに戻し、登った時と同様にするするとロープを降りていく。




