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別れ

少し焦って大声を出してしまった。

魔物の襲撃に備えて準備しておったのだ、当然襲ってきた場合にどうするかなど決まっておる。

建物の中に引きこもって、魔物が諦めて退却するのを待つ作戦だ。

そのための家の補強も済んでいるし、もし中に入られた場合も考えて屋根に登れる様に2階の窓の近くに簡易的な梯子も設置済みだ。


武器を手に戦った方が良いのではとの当然の意見も出た。しかしヴァーリアンラットが人の集落を襲う場合、数百体以上の規模で襲いかかってくるため無駄に犠牲を出すだけとの結論となった。


カーターが語ったヴァーリアンラットの特性として、獲物に襲いかかる時、狂気に取り憑かれた様になるらしい。我先に獲物にありつこうとするあまり押しのけ踏みつけ仲間を殺してしまうという。

耐えていれば少なからず数は減るし、狂気が長続きするわけもなく数時間耐えれば諦めるだろうとの目算もある。


そんな数時間耐えれば良いだけで、壊滅させられた村があるのか?と疑問に思うところである。

それもカーターが答えてくれている。何の事は無い窓を割られて家の中に侵入されているのだ。他には脆くなっている箇所や強度のない壁、ドアなどが破壊されてそこから侵入されているケースもあったらしいが、大体は窓からの侵入が主だそうだ。


たしかに突然襲撃されたのであれば、為す術もなく壊滅していたかもしれない。

しかし私たちは多少なりとも準備を行なっている状態だ。数時間程度なら耐えられるだろう。


「やってしまったものはしょうがない。手筈通り避難を進めよう」

今は失態を責める場合では無い。

ヴァーリアンラットが襲ってくるまでにはまだ猶予があるであろう。

その猶予を活用することだけを考えるべきだ。


「お主は皆への声かけを行ってくれ」

細目の男は頷きドアに向かう。最後に「すまん」と僅かに聞こえるくらいの声で謝罪して出ていった。


「お前は先にトムのところへ避難しておけ、私は避難の確認をしてから行く」

妻に声をかける。この家は平家なのでどこか1箇所破壊されたら終わりだ。そのため2階のある家に避難する事になっている。

他にも別の家に避難する様指示している家庭もあるが、集会場が一番丈夫な建物となっているため、子供をはじめ基本的には集会場へ避難する事になっている。


玄関を出て馬小屋へ向かう。

栗毛の馬と鹿毛の馬の2頭を飼っている。2頭とも私にはもったいないくらいの良い馬だ。

オタリア大陸の北部に名馬の産地として有名な村があり、そこまで買い付けに行ったのだ。

買い付けに行ったと言っても妻との旅行のついでなのだが。


思った以上に馬の値が高く、早々に諦めようとしたところ子供の馬で特別に安い2頭を発見したのだ。

なんでも体が小さいため安くなっていたそうだ。それでも親が優秀だと牧場主はアピールしていたが私が買えるくらいの値段だ。本当のことか分からない。


荷物の運搬と軽く乗馬するくらいの用途でしかないので、安いのであればと購入を決意したのだ。

しかし値段に反して2頭は逞しく育った。荷物の運搬も楽々こなす力があり。駆けると風の様に早い。それにこちらの指示をよく理解し従ってくれる賢さもある。

親の贔屓目なしに他の馬より頭ひとつ、いやふたつくらいは飛び抜けて優秀だと言える。


「フラン、ソワレ」

栗毛の方がフラン、鹿毛の方がソワレと名付けている。名前を呼びながら首を優しく撫でる。

「すまぬ。私ではお前たちを守ってやることが出来ん。なんとか逃げてくれ」

馬小屋の扉を開け、2頭を連れて外に出た。

2頭は甘える様に鼻先を近づけてくる。私は2頭の横顔をそっと撫でながら、何度も何度も謝った。

「行け。無事生き延びてくれ」

言われるがまま、2頭は村の外に歩き出す。一度名残惜しそうにこちらを振り返った後2頭は駆け出した。


別れを惜しんでいる暇は無い。村民の避難の確認などをせねば。

フランとソワレが去っていった方向に一度視線を向けた後、村の中心に向け歩き出した。

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