失態
外部と連絡をとるのはとにかく時間がかかる。
最初にトーリンズ川を渡ったところにある近隣の街に手紙を出したのは2週間も前の事になる。
そこで手紙を届けに行った若者の機転で教会にも助けを求めることが出来た。
そしてようやく教会から返事の手紙が届いたのだ。
手紙にはすぐに討伐のための人を集めてくれること、緊急の避難場所を確保してくれること、詳細を詰めるため使者を送ることの3点が書かれていた。
こちらの要望を全て叶えてくれる内容となっていた。
過去のヴァーリアンラットの被害状況から緊急度が高いと判断されたそうだ。
それと第一報で魔物の特定や状況が詳細に分かったことが功を奏した様だ。
カーターには感謝しなくては。
これで一先ず安心出来る。
最近では「大袈裟」だの「いつまで続く」だの噂されていたため胃がキリキリしていたのだ。
村民には色々と負担を強いていた。農作物の収穫時期を早めたり、魔物の対策で村の補強や巣の探索などでだ。
そんな中で魔物の巣も見つからず、それどころかあれ以来魔物の姿を見たものがいない状況だ。
「大袈裟」だと言われても否定出来ない。
しかし教会が緊急性を認めてくれて、こちらの要望も叶えてくれる事となった今は心がかなり軽くなった。
だが人を派遣して貰えるのは良いが、受け入れられるのか?そんな当然の疑問が湧いてくる。
村の補強の資材調達のために空き家は解体されており、外部の人間が泊まる場所などない。食料なども余裕があるわけではない。
考えれば考えるほど、また不安になって来た。
収まってきたかに思えた胃の痛みをまた感じる。
あー面倒くさい!!!面倒くさい!!!誰か変わってくれ!!!
そう叫びたくなる。
しかし叫んだからと言って事態が好転する訳でもない。まして窓から漏れ出た声を誰かに聞かれでもしたら。。。
そんなタイミング良く人が通り掛かることは稀かもしれないが、過去にタイミング良く通り掛かって噂されている。
気をつけねば。。。私は深呼吸をして気を鎮める。。。
その時、玄関のドアが乱暴に開かれる音と共に叫び声が響いた。
「村長、いるか!!大変だ!!」
えぇいまたしても!!大変だろうがなんだろうがノックくらいせんか!!
こちらは叫びたいのを我慢しておるというのに!!!!
妻に案内され魔物の巣の探索を担当している細目の男が入ってくる。
「すまねぇ、ウチの若いもんがしくじった」
しくじったも何も大したことはしておらんではないか。そう言いたかったが言葉を飲み込んだ。
魔物の巣の探索は開始して日が経つにつれ、辿れる痕跡と共に探索メンバーのやる気が減りほぼ機能していなかった。狩りのついでに魔物の痕跡を申し訳程度に探している状態だったのだ。
「それで何があったんだ?」
「それなんだが。。。うちの若いのが。。。あー落ち着いて聞いてくれよ」
こちらは十分落ち着いている。落ち着いていないのはお前の方だろう。そう言いたかったが言葉を飲み込んだ。
細目の男は言いづらいのか言い淀んでいる。
「問題があったのだろう?」
大したことではないと思い、発言を促した。
「若いのが魔物につけられたみたいでよ。村の場所がバレたかもしれねぇ」
「えっ。。。」
「今夜にでも魔物が攻めてくるかもしれねぇ」
「なんだと!!!!」
私は思わず立ち上がり、両手で机を叩いた。




