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日常3

魔物が出てから1週間が経った。

あれから色々と変化があったが、それも日常に取り込まれ緊迫した感じは無くなっていた。

「いつまでやるんだろうねー」、「もう魔物なんて出ないんじゃないか」なんて声が聞こえてくるほどだ。

村長が聞いたら説教が始まりそうだ。


「セイ!!」「ヤー!!」と集会場前の広場では大声が響いている。

ケン道場が再開したのだ。

魔物対策として、より実践的な訓練を行っているそうだ。

今は2人で1組になって足元や腰あたりに向けて交互に打ち合いを行っている。

そんな訓練風景を私は木陰からのんびりと眺めていた。


疲れすぎないように控えめに行っていると言うが、私からするとハードに訓練を行っているように見える。

「セイ!!」「ヤー!!」

カンカン、カーン、カンカン

掛け声や木剣の打ち合う音が一定のリズムで響き合う。


「イテッ」

短い叫びと共に一部のリズムが崩れる。

どうやら打ち合い中に怪我をした様だ。

子どもの1人が手の甲を抑えうずくまっている。

ケンが駆け寄り、声をかけている。

やがて怪我した子が、相方の子と一緒に集会場の方へ向かっていく。

訓練中に軽い怪我をする子も1日に1人くらいは出ている。

その度にミカ姉に軟膏を塗ってもらったりと手当てをしてもらっている。


ケンが手招きしている。

何かと思い、私は腰を上げ軽い足取りでケンの元へ向かう。

「シャリーもやってみる?」

ケンがさっき怪我した子の木剣を差し出してくる。

汗をかくのが嫌だったので、断ろうと思ったが、数歩でもここまで歩いて来たのを無駄にしたくなかった。

無言で木剣を受け取る。

「うわっ」

思ったより重く、片手で受け止めきれず、剣先が地面に着く。

「意外と重いね、これ」

「持ち慣れてないと、そう思うかもね。

 まぁ、すぐに慣れるよ」

そう言うとケンは私の横に並んだ。

私はケンが近くに来たことに少しドキッとしてしまう。


「こうやって持って」

ケンはこっちの気も知らず横で持ち方を教えてくれる。

「こう?」

私は平静を装い見様見真似で木剣を持ってみる。

「右手と離すように左手は少し下側に持って」

私は言われた通りにした。

するとケンが後ろから抱きしめるように両手を回す。私の右手を支え、左手をもう少し下に下げる。

『うおっ!!』声には出さなかったが心の中で叫び声をあげる。

ズルいんじゃないか!!訓練にカッコつけて!!そんな!!!

後ろから抱きしめられている様なカッコになっていることに対して心の中で文句を言う。


「このまま素振りするよ」

耳元に息がかかる。肩から腕、指先までケンと軽く触れ合っている。

ケンが私の手を支えたまま木剣を上にゆっくりと上げ振り下ろす。

「そうそう、うまいね」

褒めながら素振りを繰り返す。


ドキドキと心臓の音が聞こえそうだ。

なんなんだ!!普段こんな指導をしているのを見たことはないよ!!

文句じゃない。。。文句じゃないが。。。

周囲の視線が気になる。

真面目に打ち合いを続けている子もいるが、手を止めこちらを見ている子もいる。


「ケン、恥ずかしい」

私は小声で訴える。

「えっ、あっごめん」

ケンはようやく好奇の視線を向けられていることに気づき手を離した。

急に支えを失って、木剣の重さが全て私の手に乗っかったため、思わずよろめいた。

ケンの左手が腰に回され私を支える。

回された腕に力強さを感じドキッとする。

「大丈夫?」

私は体制を立て直し、「うん」とだけ返した。


「ケン兄、やるー」など周りから聞こえてくる。

「もう大丈夫だから、ありがと」

もう恥ずかしさの限界に来ていた私は一言だけ言ったあと、集会場へ逃げる様に走り去った。

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