日常1_裏
「こんにちは、どうぞどうぞ上がってください」
「お邪魔します」
妻が客人を家へ招き入れ、2人分の足音がこちらに向かってくる。
ガチャ
部屋の扉を開け、カーターが入ってきた。
「カーターさんいらっしゃい」
私はいつの間にか、学者先生という呼び方を使わなくなっていた。
魔物の対策をするにあたり、カーターから意見を貰ったりと協力するにつれ信頼するようになっていた。
その結果自然と名前で呼ぶようになっていたのだ。
「お邪魔します。村長」
当のカーターは相変わらずだが。。。
「ケンとシャリーさんを会わせてきました」
「あぁ、どうでしたか?」
「もう問題なさそうです。魔法の影響はないものと考えて良いかと」
私はほっと胸を撫で下ろした。
シャリーが目を覚ましてからは色々と気を使った。
というのも、魔物に襲われた経緯を聞いたところシャリーは魔物に襲われてからの記憶が無かった。
「ケンに手を引っ張られて転んだら、大きなネズミがいて。。。
うーん、そこから。。。
ごめんなさい、よく覚えてない。。。です」
とのことであった。
カーターの見解では気を失うほどのショックを受けたせいで、防衛本能が働き一部の記憶を失ったのだろうとのことだった。
結果魔法の効果に関しては目を覚ます前と同様に「恐ろしい幻覚を見せるもの」ということと結論付けた。
そして恐ろしいモノとして見える対象がケン以外に及んでいないことはすぐに判明した。
シャリーが目を覚ました時に事情を知らない母のローザーがそばにおり、甲斐甲斐しく世話を焼いたのだ。
そのおかげですぐに判断ができた、本来であれば慎重に接触すべきだったが、その話をしている最中に目が覚めたのだから仕方がない。
当事者の私が言うのもなんだが、なんとも間の抜けな話だ。
残るは魔法の効果が継続しているかどうかだ。
ケンがまだ恐ろしいモノに見えているかもしれないという問題が残っていた。
こちらはうまく事が運べた。
丁度シャリーの家の近くで家の解体をやっていたため、ケンに木材の運搬を頼むことで遠くからシャリーにその姿を確認してもらった。
ちなみにこれは私の案だ。
結果遠くからは、ケンが普通の姿に見える事が確認できた。
そして最後にケンとシャリーの接触を図ったのだ。
こちらはカーターが自分に任せてくれと言ったため一任した。
そしてさっきの「もう問題ない」との報告である。
うまくやってくれたのだろう。
シャリーが記憶を失っていたことは、ある意味都合が良かった。
仲の良かった二人の関係が壊れる可能性が低くなったのだ。
ケンは自分が使った魔法でシャリーを傷つけたことは聞いていたようだが、最悪の可能性のところまでは伝えていなかった。
これ以上二人が傷つかないように気を使ったつもりである。
子どもは余計なことを知らずに仲良く元気に過ごしていれば良い。
苦労するのは大人の役目だ。




