報い
ガチャ、ギー
ゆっくりと扉が開く。
ダニエル、父さんの順で部屋に入って行く。
俺も続けて部屋に入る。
そこにはベットから上半身だけを起こしたシャリーがいた。
「ケン!!おはよう!!」
シャリーは笑顔で挨拶をしてくる。
ベットから抜け出して立ち上がりそうな勢いだ。
慌ててダニエルが「安静にしていなさい」と嗜めた《たしなめた》ほどだ。
シャリーに声をかけられた瞬間、俺は全てが許された様に思えた。
そう思ったら涙が溢れてきた。
「シャリー。。。ごめん。。。俺。。。ちゃんと守って。。。やれなくて。。。」
袖で涙を拭いながら、言葉に詰まりながら、それでも懸命に言葉を紡ぎ出す。
「ううん、ケンは守ってくれたよ。
ほら、私今元気でしょ!!」
そう言ってシャリーはベットから立ち上がり、腕を上げたり下げたりし元気アピールをする。
「ねっ、だからね泣かないで」
少し困ったような、それでいて優しげな表情でシャリーはお願いした。
女の子に「泣かないで」と言われても泣いたままだと情けなさすぎる。
「大丈夫。。。もう泣いてない。」
まだ涙は出てきているが、言葉だけでも虚勢をはる。
大きく息を吐き、大きく息を吸い込む。
深い呼吸をし精神を落ち着かせた。
「もう大丈夫」
今度こそ涙を止めて、しかしまだ震える声で言った。
「今日の分の薬です。
ケン、お水をとってあげなさい」
父さんはシャリーに薬を渡した。
俺は机に置いてあった水差しからコップに水を入れる。
こぼさないようゆっくり運び、「はい」とシャリーに手渡す。
「ありがとう」
ベットに腰掛けているシャリーは上目遣いにこちらを見た。
目が会い、俺はたじろいだ、視線を外し一歩下がる。
シャリーが薬を飲み終えたタイミングで父さんが部屋を出て行こうとした。
「用も済んだので、私はこれで」
もう終わりか、俺は父に着いて行こうとした。
その時、シャリーに袖を掴まれる。
「もう行くの?」
父さんの方を見たが、すでにダニエルと共に部屋から出て行っていた。
「じゃあ、もう少しだけ」
シャリーは嬉しそうに笑い、ポンポンと自分の座っているベットを叩く。
促されるままにシャリーの隣に座る。
「外に出ちゃダメって言われてて、つまんなかったんだよ。
ミカ姉もお見舞いに来てくれないし」
不貞腐れたように頬を膨らませる。
「仕方ないよ、魔物が出てからはあまり出歩くなって言われてるんだし」
「お父さんみたいなことを言うー」
そうなのか。シャリーのお父さんとはあまり離した事がないからよく分からない。
シャリーは「我慢してくれよ。今は。。。」と父親の真似をして喋る。
「それだけ心配なんだよ」
シャリーはこちらを見て、唇を尖らせ拗ねたような顔をする。
「ケンはお父さんの見方をするの?
私の味方してくれないんだー。
そうなんだー」
そう言い足をパタパタとさせる。
「うーん、そんな訳じゃないけど。。。」
俺は困ってしまう。心情的にはシャリーの味方をしたいが、シャリーのお父さんの言っていることの方が正しい気がする。
しかし、数日家に閉じこもっているのだ、鬱憤も溜まっているのだろう。
「これから、集会場に行こうか。
俺が付き添うって言えば、大丈夫だよ」
「えっ、行きたい!!でも、大丈夫かな?」
「うん、体調は良いんだよね」
シャリーは「うん」と頷いた。
「だったら、大丈夫だと思うよ。
ちょっと待ってて。シャリーのお父さんに聞いてくるから」
立ち上がるとシャリーに袖を掴まれる。
「ちょっと待って、ケン。。。」
こっちを真剣な眼差しで見つめてくる。
思わず、シャリーの大きな瞳を見つめ返す。
「ありがとう。。。」
「えっ」
俺は間抜けな声で聞き返してしまう。
「守ってくれてありがとう。。。」
シャリーは視線を外し、伏せ目がちで答える。
「ッッ」
あぁ、駄目だった、俺は溢れる感情を抑えきれなかった。
溢れた感情は涙となりこぼれ落ちる。
今度の涙は止めれそうにない。
シャリーの「ありがとう」で俺の行動はようやく報われた。




