日常6
「母さんと何喋ってたの?」
ケンに集会場に行く道中で聞かれた。
「そんな大した話していないよ。
お菓子の準備とかしてもらってたし、そんなに話す時間なかったよ」
ケンがホッとした顔をした。
もしかしたら自分の噂をされていないか気にしたのかもしれない。
もう少しケンが遅く帰ってくれば聞けたものを。。。
「あー、でもケンのお父さんが薬草取り参加したいって言ってたよ」
「えっ、ごめん父さんが変な事言って」
「ううん、人手増えるのは助かるし、そんな大層な物でもないから」
私は両手を左右に振りながら返答した。
「ケンも来るよね?」
「そもそも薬草取りって、森に薬草取りに行くだけ?」
「んーそう思って大丈夫かな。大人は小さい子達に薬草の場所教えたりとかあるけど。」
「父さんも行くなら、行く事になるかな」
「本当に!!やった!!」
私は嬉しそうに言った、ミカ姉は店番で来ないのだ。
ケンが来なかったら黙々と薬草を摘む事になる、話し相手ができるだけ嬉しいのだ。
「「こんにちは、ミカ姉」」
いつも通り俺達はミカ姉に挨拶する。
「こんにちは、今日は遅いね」
「今日はケンの家に寄ったからね」
と私は返すと、ミカ姉は何かを察したのかチョイチョイっと手招きをする。
2人でミカ姉の方に向かったが、私だけに用があったみたいでケンは追い返され、集会場に入っていった。
「何かあったの?」
とニヤニヤして聞いてくる。
「えー、何もないよー」
「嘘おっしゃい、この顔は何かあった顔だ」
そう言って両手で私の頬をムギューっと挟んでくる。
「ふぉんとだよ、ふぁべれふぁいよ」
ミカ姉は満足するまでひとしきり私の頬はいじくりまわした。
「それでケンの家で何したの?」
「別にお菓子ご馳走になっただけだよ。
それにケンが出かけてたから待たせて貰っただけ」
「そっかー、遅かったから何かあったと思ったのに」
ミカ姉は残念そうな顔をする。
「別にケンとはそんなんじゃないからね」
「うんうん、分かってるよ。
でも、ケンはこの村にいないタイプでしょ?」
「うん」
思わず頷いてしまった。
それに調子を良くしてミカ姉が続ける。
「愛想が良く人気者」
「うん」
愛想の良さは母親譲りであろう、それと剣の稽古をする様になり子供のみならず大人からの評判も良い様だ。
「切れ目で鼻筋も通って凛々しい顔つき」
「うん」
顔つきは父親似だと思う。
「身長もこれから伸びるだろうね」
「うん、そうかも」
ケンのお父さんは背が大きいのでこれから伸びる可能性はありそうだ。
「性格もね。。。」
とミカ姉がためを作った。
「優しい。。。」
テンポ良い会話だったので、つい私が口を出してしまった。
「他には?」
ミカ姉が更に問いかける。
「面倒見が良いし、一生懸命かな。。。」
「うんうん」
ミカ姉は真面目な顔をしているが頬が緩んできている。
「ミカ姉!!」
「もっと聞かせて欲しいなー」
「もう言わないからね」
しかし私にケンへの感想を言わせるためとは言え、ケンを褒めている。
実はミカ姉も。。。と一抹の不安がよぎる。。。
「ミカ姉は。。。ケンのこと。。。どう思っているの。。。?」
私は普通に聞こうとしたが、いかにも消え入りそうな言葉になってしまった。
「大丈夫だよ、友達としか思っていないよ」
そう優しく答え、私の頭を撫でた。
私は「あっ」と言い途中で身を引いて、両手で頭を抑えた。
ケンから頭を撫でられた感触などとうに消えていたが、なんか上書きされた感じがしたのだ。
ミカ姉は不思議そうな顔をしたが、一瞬で私の両肩をつかみ
「やっぱりなんかあったなー」
と今度は逃さないという気迫を全面に押し出して聞いて来た。
この後私はケンに頭を撫でられた事を白状させられたのだった。