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7月7日 曇りのち晴れのち曇り エピローグかパラレルか

作者: 雨月 宙

 今日は七夕。織姫、彦星が会える日というのは有名な話。宇宙(そら)の星で言えば、Vega、Altair。何かと、歌にのりやすいワードでもある。


 部屋のベットから起き上がった時にはすでに夕刻も過ぎ、真っ暗の夜。朝は、雨雲で覆われた空は、昼間、晴れ間を見せて、久しぶりの天の川鑑賞かと少し胸躍る気持ちがあったけれど、会社帰りには曇り模様。何が、どちらかの機嫌が悪かったのか、それとも一年に一度逢瀬を邪魔したい誰かがいたのか、などと考えて、馬鹿馬鹿しさに小さく笑ってしまう。

 暗闇でも分かる、どんよりした雲。覆われて、宇宙(そら)は関係なしで天の川もさぞ綺麗で、二人は天の川を眺めロンティックに浸りながら逢瀬しているだろうが、こちら現実は今の嘆きかという様に晴れはしない。コロナという未知に近いウイルスが、おとぎ話だけでなく、現実の恋人達をも引き離した。明るい未来とは?いつになったらと、そう思うと、この曇りは、不安の象徴かもしれないと思って、また馬鹿馬鹿しくて今度は、大きく、はっと声を出して笑ってしまった。

 恋人ねぇと思って、秘めた想いを胸に、今日も誰に相談できずにいることに、なんとも言えない感情が渦巻いて、泣きたくもないのに泣きたくなった。

 ふと、下のリビングから家族の談笑が僅かに聞こえるのと混じって、談笑よりはクリーンだが小さな音で、懐かしい曲が流れ出した。流れる曲の方を見れば、携帯から。一眠りする前に、ラジオを聞いていたのを思い出す。

 今日、七夕は、想い人を想わずにはいられない日。でも、会うことはできないというよりも、会えば会えるのだろうが、現状の忙しさでそれも叶わない。というのは建前で、社会人になって距離が離れてしまい、誘うことを躊躇ってしまうというのが本音。七夕だからこそ会いたいが、七夕だからこそどう誘っていいか分からない。こんがらがって解けない糸の様に、どうしてこんな難しくなってしまったのかと、そんな想いを抱いていたら、一人、ふて寝の様に部屋のベットで寝転がり、それでも騒つく気持ちで眠れず、ラジオを子守唄代わりにしたのだった。

 流れている曲は、あの人が好きだと言った曲。今日が七夕だから、誰かリクエストしたのかもしれない。7月7日には、打ってつけの曲だと今になって、より自覚する。Vega、Altair。どっちがどっちで、なんて、曲に秘めた想いをのせて想いを馳せる。どっちがどっちかなんて、有り得ない現実に、曲の切なさと相まって目頭が熱くなった。

 冷やすついでに窓を開けて、籠った空気を外へ追い出して、新たな風を入れて、気持ちを落ち着かせる。


 曇り空、あの人は何を見て、何を考えているのかと想いを馳せた。


 7月7日 曇りのち晴れのち曇り


 今日の気持ちの変化の様で、笑える一日。


 君への想いは永遠に、流れる曲を口ずさみながら明日へとまた進むのかと思い、想いは巡り巡って、君と会える日を宇宙(そら)の星に願った。

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