奴隷商人、服屋にご案内。
お金の価値を教えるべく、服を売っている店へまず案内する。
ギルドの冒険者もここで買っているし、まぁ、丈夫な服である事は確かだ。濃い青で塗られた木のお店の扉を開けると、雑貨や服が所狭しとぎゅうぎゅうにディスプレイされている。
「いらっしゃい〜」
服屋のお姉さんが愛想よく挨拶してくれて、「適当にどうぞ〜」って大変やる気のない言葉をかけてくれる。しかし、この気楽さが大変楽である。
サイファは、ちょっと驚いたように店の中を見ているけど、買い物した事ないのかな?
「サイファは今までどんな所で買ってたの?」
「‥行商から、いつもあちこち行ってた、から、店入ってない」
お店初デビュー!!??
22歳なのに!??
思わず目を丸くして、サイファを見上げてしまう。
「そっか、じゃあ、初お店デビューおめでとう。今持っている服はどんなの?」
「シャツ2枚。下着3枚、ズボン3枚」
「‥詳細にありがとう。んじゃ、シャツはあと3枚くらい買って、他は2枚くらい買い足しておこっか。それでもっと必要なら、自分で買いに行けばいいよ」
私がそう言うと、コクっと頷く。
黒髪の長い髪がさらっと肩から流れて、綺麗なのに‥お店初デビュー‥。面白すぎる。
「まだ春だし、夏用の薄手のシャツとか、冬用は今度買えばいいか。サイファが好きな色を買おうか。何色が好き?」
私がそう聞くと、サイファは少し考えて‥、私をじっと見たかと思うと、
「‥フィオの瞳の色」
至極真面目な顔で言うから、頭に単語の意味が入ってくるまでに時間が掛かった。
ようやく意味を理解してから、顔が赤くなった。
な、な、何を言い出すんだ!!何を!!!
「サイファ、色の言い方、し、知らないの!??」
「栗色」
「そう言ってくれぇえええええ!!!」
知ってるじゃん!!
だったら、そう言ってくれよ!!!
思わず照れちゃうだろ、そんな言い方されたら!!!うう、サイファはただそういっただけ‥、そう言っただけ。自分に言い聞かせて、ブラウン系のシャツをいくつかサイファに見せる。
「この中なら、どれがいい?」
「これと、これ」
「ん、じゃあ試着室っていうのがあってね?服が体に合ってるかを試せる部屋があるの。汚さないように気をつけて、あとで着てみようね。あとはズボンも見繕っておこう」
ズボンの方はすんなり見つけられたので、靴下と下着は自分で選んで貰って、色々選んだ服と一緒に試着室にとりあえずサイファを突っ込んでおいた。
は〜〜、しっかし、世間をあまり知らない感じだとは思ったけど、
あまりに知らない感じに驚いた。
あんなに美形で、強いのに、よく無事に今まで生きてこれたな〜〜。そっちにも驚きである。
やがて試着室のカーテンが開いて、一式着替えてサイファが出てきた。
ブラウンのシャツに、濃い茶色の細いズボンを履いているだけなのに、モデル!?モデルなの!??ってくらい格好いい!っていうか、足、なっが!!!股下何十センチあるんだろ。
店員のお姉さんも、惚れ惚れしてる‥。
「サイファ、めっちゃ似合うね!!」
私がそうしみじみと話すと、サイファは少し照れ臭そうに俯く。え、何それ可愛いんだけど。
「じゃあ、それを買おうね。せっかくだし着てっちゃおう。あと必要なものない?」
「大丈夫、」
サイファは、ちょっと目をウロウロさせて私を見る。
何か不安な事はございましたか?
「‥フィオ、服は?」
「あ、私はいいから。まずは自分のを揃えておこう」
第一、そんな金はない。
まだ心配そうな顔をするので、とりあえずお金の支払い方を教えておこうと一緒にレジへ行く。
「銀1枚と銅貨3枚でーす」
店員のお姉さんが未だうっとりとサイファを見つめている間に、サイファの小袋から銀貨を2枚さっと出して支払わせる。お釣りを貰って、サイファは手の平のお金の数を見て、ある程度理解したらしい。飲み込み早いじゃん。
サイファは、嬉しそうに私を見て、
「フィオ、師匠みたい。教えるの、上手」
「し、師匠!!??」
雇い主から、師匠になったの?!
それでもぎこちない笑みでなく、本当に嬉しそうに初めて笑ったサイファに、ドキッとしてしまって‥。慌てて思わず顔を逸らしてしまった。ちょ、ちょっとイケメンがすぎる!!




