奴隷商人、大事なものは沢山。3
結局、サイファと一緒に木の実を採ったけれど、私ばかりが恥ずかしい思いをしたような?
大きな葉っぱに赤い木の実を包んで、またサイファとカティーのいた場所へ戻ると、焚き火をしつつ魚を焼いてるではないか。い、いつの間に!?
「カティー、魚なんて獲れたの?」
「当たり前だろうが!竜族をなんだと思ってるんだ」
反抗期の中学生かな。
サイファはもう今すぐにでも「放っておいて帰ろう」と言いたそうな顔をしているけれど、このまま帰るのもなぁと思って、カティーに葉っぱに包んだ木の実を渡すも、受け取ろうともせずプイッと横を向く。
完全に反抗期の中学生ですね。
「別にいらん」
「魚だけじゃ足りないでしょ。美味しいから後で食べてみて。それと今日は爺ちゃんが剣を作るの手伝ってあげて。私もお仕事頼みたいし‥待ってるからね」
これで嫌だって言ったら、もう帰るぞって命令するしかないか?
そう思っているとカティーはチラッと私を見上げて、小さく頷いたのでちょっとホッとした。
横にしゃがんで、葉っぱに包んだ赤い実をカティーに差し出すと、
ようやくそれを受け取ってくれた。
「そういえばカティーの好きな食べ物ってなに?」
「は?」
「カティーが好きな物も作っておくよ。で、なに?」
そう聞くと、カティーは目を丸くする。
そうして私をまじまじと見ると、「‥馬鹿か?」って言うんだけど、本当に失礼な奴だな!私がジロッと睨むと、ヒョイッと私の両脇にサイファが手を入れたかと思うと、そのまま縦に抱き上げた。
「さ、サイファ?!」
「カティー、もう大丈夫。そろそろフィオ帰らないと学校がある」
「あ、そうだった!じゃ、カティー家に戻ったらニュイさんに伝えておいてね!」
カティーはサイファに抱っこされた私をチラッと見て、ムスッとしたまま返事をしないけれど‥。まぁ、甘いのが苦手っぽいから塩っぱい物でも用意してあげるか‥と思っていると、サイファがいきなり空を飛び上がる。
「わわ!!さ、サイファ!いきなり飛ばない!」
慌ててサイファに話すと、サイファは私の鼻の頭にチュッとキスをした。
な、なんで??サイファを赤い顔で見つめると、サイファがまたも唇がちょっと尖らせる。
「もうフィオは俺だけ見てて」
「‥さ、サイファさん??」
「‥竜族、番とても大事。‥本当はずっと俺だけ見てて欲しい」
「そ、そうなの?」
竜族の習慣とかルールとか何にも知らない私はサイファをまじまじと見つめると、サイファは静かに頷く。そっか〜〜、そうなのか‥。
思い起こせば私が習慣やルールやマナーも何にも知らないから、サイファの鼻にキスしたら「貴方は私のもの!」みたいな意味合いだったり、黒髪いいね〜!って染めたら「結婚したい」って意味だったらしいし‥。キスされて、仕返したらまさかの「プロポーズを受け取って番になる!」って意味だったりと、ものすごく色々やらかしているもんなぁ‥。
うん、気をつけよう。
なにせ私達、新婚だし‥。
と、自分で新婚っていうワードに照れて、ほんのりまた顔が赤くなる。
「フィオ?」
「いや、結婚したんだなぁって思ったら、なんだかじわじわと照れ臭さがきて‥」
「フィオ、嬉しい?」
「そりゃ、嬉しいですよ‥。結婚したのがまだちょっと信じられないくらい?」
「大好き?」
「うっ‥!まだ信じられないくらいの初心者に‥そんな澄んだ目で聞いちゃいます?‥‥大好き、ですよ」
そう言った途端、サイファがパアッと顔を輝かせ、私を抱えながら空中で宙返りしたから、私はそれはもう大絶叫した。
いくら安全シートベルトのサイファがいても怖い!!!うっかり落ちたら絶対死ぬ!!!家に戻ってきてから、今度空中宙返りしたら絶対一緒に飛ばないって、涙目で足をガクガクさせながら言ったらサイファは流石に反省してくれた。本当に頼むよ。当然、学校までは地に足をつけて私はサイファと歩いていった。
そうして学校の机に突っ伏した私に、幼馴染のアッシュが、
「今日、課題の発表お前だぞ」
って、死の宣告をしてきた。
もう朝だけでお腹いっぱいなんですけど〜〜〜!!!
夏の暑さにものすごく弱いのでへばってました‥。
昨日の分も含めて2話更新〜。




