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奴隷商人、大事なものは沢山。2


家に帰ってこないカティーを探す為に、爺ちゃんから地図を借りに行きがてら事情を説明すると、



「今日は剣を作るからすぐ戻ってこいって言っておいてくれ」

「自分で言ってよ‥」

「お前が主人だろ」

「‥そうでした」



うーん、ようやく最近は命令でなくお願いで話を聞くようになったし、この間トルアに行った時はサイファと黒の呪いを協力して倒してくれたし‥、いい感じだなぁとは思ってるんだだけど‥。聞いてくれるかなぁ。



サイファと玄関に出ると、サイファが背中から黒い翼を出し、

私をヒョイッと抱き上げる。


「フィオ、腕を首に回して」

「う、うん」


もはや当たり前のように抱き上げるなぁ〜〜と思いつつ、そっと腕をサイファの首に回すと、嬉しそうに微笑むサイファ。そういえば、背中の翼を出す度に思ってたんだけど、服って破れないのかな?気になって聞こうとした途端、サイファの翼がバサッと動いたと思った途端、空をグンと飛び上がる。


「わわっ!!」


急に飛び上がるでない!

慌ててギュッとサイファの首に回した腕に力を込めると、サイファも私の体をギュッと抱き寄せる。うう、ドキドキするんだけど〜〜!ジトッとサイファを睨むと、ニコニコしてるけど‥なんでそんな機嫌がいいの?


「フィオ、カティーの場所、わかる?」

「うん。あっちの山の方」

「わかった」


指差したのは、いつもキノコや山菜を採りに行く山。

奴隷と奴隷商人は離れても、どこにいるかがすぐにわかる。

私は地図を見つつサイファと山へあっという間に飛んで行くと、山の頂上付近に木々が倒れて拓けている場所が見えた。



「いた。カティー、寝てる」

「え、どこ?」

「あそこ」



サイファが指差してくれたけど、見えない‥。

竜族って目が良いんだなぁ。

私はサイファと結婚して、命が普通の人間よりずっと長くなったらしい。‥全然自覚ないけど。だけど竜族が本来持っている力みたいなものは得られる訳ではないので、サイファのように飛べないし、ものすごい力もない。当然、今のように遠くを見通すこともできないのだ。



「サイファってすごいねぇ〜」

「‥そんなこと」

「飛べるし、見つけられるし、力も強いのに?」



まだ何か引っかかることでもあるの?

首を傾げると、サイファは笑って、


「フィオの方がすごい」


って言うけど‥。

何を言ってるんだ君は。

そんな事を思っている間にサイファがグングンと山へ近付いていくと、私にもカティーが見えてきた。



いつの間にか木と木の間にハンモックのようなものを設置してたらしく、そこで寝ている。あやつ、いつの間に‥。



「カティー!そろそろ朝ご飯の時間だから帰ってきなさーい!」



そう叫ぶと、カティーはチラッと私を見て、すぐに目を瞑った。


「いらねぇ。まだ寝てる」

「何言ってるの!朝ご飯食べないとお腹空いちゃうよ」


それでなくてもうちは貧しいのに、一食抜いたら大変だぞ。

だけどカティーは「いらない」の一点張りだ。

‥まったく、こりゃ本当に反抗期突入した中学生のようだ。


「フィオ、甘やかさなくていい。放っておけ」

「サイファ‥、そういうわけにはいかないでしょ」


うん、こっちは私に構って欲しい!な、サイファさんがいたね‥。

私はちょっと考えて、サイファの耳元に顔を寄せる。


「ふ、フィオ?」

「あのね、サイファ‥、山の中腹にこの時期木の実がなってる場所があるの」

「あ、ああ‥」

「そこのを採ってきてあげよう。あと一緒に採ったの食べない?」


サイファは私の提案を嬉しそうなのに、苦しそうな顔をして‥



「‥‥わかった‥‥」



と、頷いてくれた。

ごめんよ、反抗期の中学生のようなカティーをそもそも奴隷商人としても放っておけないんだ。


サイファと中腹にある場所まで飛んでいくと、赤く色づいた木の実が沢山なっている!うわ〜〜!美味しそう!これは皆にも採ってきてあげよう!サイファと地面に降り立って、早速木の実をいくつも採って大きな葉っぱに包むと、サイファが面白そうにそれを見つめた。



「葉っぱに包むのか」

「そう!この葉っぱってね、殺菌作用があるんだって。その上、魚とかお肉とかを包んで蒸すといい香りがするんだよ〜」

「フィオ、物知り!」

「サイファだって色々知ってるじゃん。私は生活に関わる事だけだよ」

「それでもすごい!」



嬉しそうに褒めてくれるので、私まで嬉しくなって赤い木の実をサイファに渡そうとすると、首を横に振られた。え、木の実嫌いだった?と、サイファは自分の口をトントンと軽く叩き、


「食べさせて」

「っんなぁああ?!!」

「フィオからがいい」

「ううう、初心者なんですけどぉ???」

「俺も初心者」

「絶対嘘!それは手練れの行動ですって!」


木の実と同じように赤い顔で睨むと、サイファはクスクスと笑って口を開けるので、私は慎重に赤い木の実をサイファの口に運ぶと、指ごとパクっと咥えられて叫んだ。



え、叫ぶよね?

恥ずかしくて叫ぶよね?




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