奴隷商人、工夫してます。
そんな訳で、仕事が早々に舞い込んできて私もドロワ爺ちゃんも大変嬉しい。
なにせ我々は貧乏な奴隷商人!
ドッティさんみたいに潤沢ではない‥。まー、あそこ変なのも多いけど。
翌朝起きて、一階へ降りて行くと‥、
ドロワ爺ちゃんがサイファに何やら話している。
「おはよ〜。爺ちゃん、何してるの?」
「お〜、サイファが剣があれば欲しいってんでな。一つ譲ってやったとこだ」
「剣!??」
サイファを見ると、静かに頷いて‥、
「隣街に行く途中に、野生の熊が出るとペリートさんが‥」
「あ、ああ‥、確かに獣の類は出ますけど‥」
夕飯の後、何やらペリートさんと話し込んでいるな〜って思ったけど、そんな事を教えてあげたんだ。なかなか優しいではないか。そう感心していると、サイファは爺ちゃん特製の剣を見ながら、
「酒代と引き換えに教えてくれた」
「「よし、あとで締めておくわ」」
キッチンから、ペリートさんが慌てて顔を出して「ちょ!!シー!!!黙っておけよ!!」とか言ってるけど、あとで説教部屋行きである。全くもう〜!!!
爺ちゃんを見るとニヤニヤ笑って、
「まぁ、いいんじゃねぇか?情報収集の方法をちゃんと知ってて大したもんだ!!」
ガハハって笑うけど、そういう問題じゃない。
全くうちの家族と奴隷ときたら!!
ニュイさんがいつものように、ほんわかした声で‥、「朝ご飯よ〜」って呼ぶので手伝いに行くと、サイファも剣を腰に携えて手伝いに来てくれる。なんという偉い奴隷希望者であろう。
眠そうな顔をしてピコも手伝ってくれて、朝食である。
ちょっと戸惑っているサイファを隣に座るように話すと、ホッとした顔をしてる。うちには今まで来た事のない控えめな奴隷だな〜。
もぐもぐ食べてて、ふと気付いた。
「あ、そうだ!今日サイファって何時まで仕事だろ。聞いておけば良かった〜〜」
私がそういうと、爺ちゃんがちょっと考えて‥、
「隣街まで大体30分で、荷下ろしをして、まぁ、昼前に帰ってくるか、ちょっと跨ぐぐらいだな」
「だよね!じゃあ、お弁当必要かもだ」
サイファは私の顔を不思議そうに見る。
ごめんね〜、気が付かなかった!!
「簡単にサンドイッチだけ作っておくから、持っていって!」
「‥え」
「朝食の具を適当に挟んだだけで申し訳ないけどね」
そういって、本日の目玉焼きをささっとかっ込むと、立ち上がって昨日リコのパン屋で買ってきた食パンを薄く切って、適当に具を挟む。
ニュイさんが、ニコニコ笑って‥
「包み紙と、布巾出しておくわね〜」
と、さっと用意してくれる。ニュイさん、流石です。
ペリートさんは、そんな私を見て、「フィオ、食べられるもんにしておけよ」っていうけど、あとでお説教部屋だからな?
パパッと包み紙でサンドイッチを巻いて、布巾で包んだのをサイファに渡す。
「はい!簡単でごめんね。今度お昼が必要だったら言ってね」
「あ、ありがとう‥」
私からサンドイッチを受け取ったサイファはぽかんとしている。
何か、嫌いな物などございましたかね?
そう思ってサイファに聞こうとしたら‥、
「‥大事に、食べる」
‥静かに、ぎこちなく笑うサイファ。
すごく大事にそうに抱えて、じっとサンドイッチを見るので、もっと具を豪華にしてあげれば良かったかな?とか、もっと早く気付けば、美味しいのを作ったのに‥とか思ったけど、また作ればいいや!って思った。
「‥いつでも、いくらでも作りますよ」
なんだか上手く言葉が出てこなくて、そう話すと
サイファは少し考えて、
「稼ぎ、次第だろうか‥」
「うーーーん、否定できない!!!」
ごめんな〜〜、うち貧乏で!!
思わず肯定した私を、今度は面白そうに小さく笑ったサイファ。すまない!!我が家は貧乏だけど、できる限りお弁当は内容を工夫するね!!




