読書の季節
真っ白な心で呼んでください。
太陽の光が見えてくると、朝の訪れを感じさせる。清々しい朝だが、隣のやつはまだ寝ているみたいだ。俺はしょうもないことを考えながら、隣のやつが起きるのを待った。目の前に見える本棚の本のタイトルに『の』が何個あるかを数えていると、隣のやつが起きた。
「ふぁ、おはよう。今日は早いんだな。」
「ああ、おはよう。ちょっと最近聞いた噂が怖くて長く寝られなかったんだよ。」
「噂?どんな噂なんだ?」
「まあ、俺も隣のやつらが話してるのを聞いただけだから、本当かどうかは知らないんだけどよ、どうにも最近、さっきまでいたやつが急にいなくなるっていうことが起きるらしいんだよ。」
「なんだよそれ。そんなのありえるわけないだろ。」
「俺もありえないとは思うんだけど、いなくなったやつがどうなるのか分からないから、もし自分の周りで起きたらと思うと怖くてよ。」
「大丈夫だって、所詮噂なんだから。」
今話しているやつは、かれこれ一年近くはずっと一緒にいる友達である。どんな時でも一緒だった。だからこそ、もしあいつがいなくなってしまったらと思うと怖かったのだが、あいつの言葉を聞いていたらなんだか噂がバカらしくなってきた。俺は、気持ちを切り替えていつものようにあいつと暇つぶしでもしようと声をかけた。
「なあ、お前が起きる前に目の前の本棚の本のタイトルに『の』が何個あるか数えてたんだけど、何個だったと思う?」
「そんなことしてたのかよ。暇人だな。」
「しょうがないだろ。やることないんだから。」
「まあそれもそうか。そうだなぁ、『の』の数か。」
友達はこんなくだらない質問でも真剣に考えてくれる。だから一年経っても一緒にいるのが苦にならないのだ。いつものように友達が答えるのを待っていると、なかなか答えが返ってこない。不思議に思った俺は友達の方を見てみることにした。すると、そこに友達の姿はなく、知らないやつが少し離れた場所にいるだけだった。
ただ、俺があいつの方を見る直前に『この本面白そう』と言う声だけが聞こえていた。
少しでも面白いと感じてもらえたら嬉しいです。