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僕らが許した理由



「あー、あるある。すごいぞ! 僕のラメ入りスペシャルカード、巣の外壁に使われてる! あのカードの防御力はSSSだからな。滅多な攻撃は跳ね返すに違いない。なかなか賢いやつじゃないか!」


「交代して!」


 トシカズがイチヤから双眼鏡を奪い取った。勉強机に腰かけて、部屋の窓から公園の大木に焦点を合わせる。


「あ、僕の眼鏡ケースに二羽の黒い雛が座ってる! あんな物が子供たちのベッドになるなんて……何だか嬉しいや!」


「私にも貸してよぉ……」


 懇願するアイにトシカズが優しく双眼鏡を手渡した。


「あぁ……やっぱり。ワタシのハート印のスプーンが、ウンチまみれになってる……うぅっ、かなしみ(涙)」


「いいじゃないか、あれもちゃんと巣の一部になって、役に立ってると思えばさ」


「巣の材料になる物は、この世にたくさんあるのにぃ~私のスプーンはこの世にあれしか無いのにぃ~」


「あーい! 私が今度新しいの買いに行ってあげるから、落ち込まないの!」


 マリアが優しい言葉の慰めをプレゼントする。


「……ありがと。そういえば、マリマリのブローチ何処にいっちゃったの?」


 イチヤが自分の元に戻ってきた双眼鏡を覗きこんで言った。


「さっきから探しているんだけど、見つからないんだ。巣の中には無いのかもしれないぞ」


 マリアが首を振った。


「いいの。仕方ないわ。だって相手は『カラス』なんだから……」



 マリアの言う通りだった。結局、アイの部屋を荒らした犯人はハシボソガラス(イチヤが図鑑で調べた)の母親だった。


 アイの家の前の公園は、町内のカラスが住み着いている場所のひとつだった。子育ての季節になれば、カラスたちはあらゆる物を巣の材料にしようとする。


 たまたま公園の隣にちょうどいい高さの家があって、たまたま人気(ひとけ)のない部屋が見つかった。たまたまそこにカラスの興味を引く光り物や、巣作りの材料が置いてあった。それらはすべて偶然の出来事だった。


たまたま(・・・・)窓を開けっ放しにしたヤツが、一番悪いってことじゃなくて?」


 イチヤが鋭い所を突いた。


「な、なんだよ。そんな事を言ったら僕を熱くさせたイチヤも共犯ってことにするぞ!」


「はぁ? タイチ頭わるーい。屁理屈ばっかじゃん」


 アイも遠慮がない。


「誰が屁理屈だ!」


「それにしても、本当にカラスって頭がいいや。まさか買い物するみたいに、袋を持ち歩く鳥がいるとは思わなかったね」


「しかも忘れ物しちゃうんだからなあ。ドジな所なんか、人間以上だぞ」


 イチヤの冗談で全員が笑った。


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