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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無気力猫の裏稼業

作者: haruki

「いーらっしゃーいーまーせー」

「今日もやる気ないね、お兄さん」

 金曜日の放課後、学校帰りの僕は人の少ない喫茶店へ足を運ぶ。気怠げな表情と、やる気のない声が特徴のお兄さんが勤めている店。内装は地味、出される珈琲はお世辞にもうまくない。正直、インスタントの方が遥かに美味しい。ただ、店の出す味もさることながら。接客態度も最悪なので、コアな客以外は滅多に来ない。

「やる気なんか出る訳ないだろ。何が社会貢献だ、自分が楽して財布肥やしたいだけだろ。けっ」

「口悪いよ、僕お客さんなんだけど」

「はい、口止め料のアイス。言うなよ、約束だぞ」

「はいはーい、お兄さんの作るアイスは絶品だから黙っておいてあげるよ。うん、おいひい♪」

 家じゃ中々食べられないアイスに僕はご満悦。帰宅時間になっても僕は喫茶店に入り浸った。客は僕だけ、こんなんでやっていけるのだろうか。実は配達サービスをしてるのか? 雇われなら兎も角、お兄さんはやらないだろうなサービス。微妙過ぎる笑顔が精いっぱいの顔だし。

「また来るね、アイス奢ってよ」

「金落せ金持ち。小遣い貰ってんだろ」

「奢ってよ、また。美味しかったんだよ、裏メニュー」

「……そんなに言うなら、こっそり追加しとくよ。ただでいい、また来なよ」

 はいはーいと僕は店を後にする。今度はちゃんと払おうかな、でもただアイスは魅力的だ。小学生にとってアイスは高級品、美味しいならば頼むべきか。

「……さて……と」



 誰だよ、眠れないから散歩でもしようかなって思った無謀な小学生は。あ、僕だわ。てかここ、日本だよね。リアルなバーチャル世界じゃないよね、野良犬が二犬も追いかけてくるんだけど。牙剥きだして涎たらしてる、こわっ!

「なんて思ってる場合じゃないか、逃げないと。……行き止まり!」

 お約束だな、もう。あぁ、どうしよう。後ろは壁だし、前は飢えた野良犬。僕はここで美味しく食べられてしまうのか、そんなの嫌だ。

「え、ちょっと……誰か! 居ませんか! ここにピンチの小学生が居ます! 大ピンチです、命の危機に瀕してます! 正義のヒーローじゃなくて、誘拐犯でもいいです。助けろ下さい!」

「それが他人に物を頼む態度かよ……」

「あ、誰か来……変質者だこの人!」

 マスクINパーカー所持包丁! どう見ても不審者です。でもな、藁にも縋りたい思いだし。この最不審者でもなんでもいいや。

「助けて! すっごい嫌だけど、助けて不審人物!」

「……仕方ないか。子供の死体とか見たくないし……おら、こっちだ」

 おぉ、見事な包丁捌き。出来れば台所で発揮してほしかったな、その器用さ。野良犬二匹は解体された、うわグロっ……。でも、人を襲おうとすると殺処分されるのがこの世の理。どっちみちこうなってはいたんだろうけど、目の前で殺されるのは見ていて気分が悪い。よし、持ち直した。

「助けてくれて有難う、お兄さん。身代金は一億までなら払えるよ、お父さん金持ちだから」

「要らないから、興味ないし。さっさと帰って、危ないから」

「えぇ、お兄さん意外と無欲なの。またまた、五千万でどう?」

「小学生が持ち出す金額じゃないっての。ほら、帰るよ。送ってく」

「なんで僕の家知ってるの……不審者だからだね!」

「うんそう、お兄さん不審者だから君の家知ってるの。だからついてきて」

「わぁ、誘拐犯もびっくりの手口だぁ……でも行く! 早く帰って布団を被りたいから」

 無事に家までは辿り着いた。不審者だったけど、昼見たら通報してたけど。いい人だったな、野良犬殺してたけど。なんか急に残酷になったな。


「お兄さん、アイス頂戴! ただで!」

「厚かましいぞ、お前……はい、どうぞ」

「やったー!」

 文句言いながら出してくれるお兄さん好きだよ! あぁ、アイス美味しい。お兄さんに対する疑問は、アイスが口で溶けると共になくなっていった。


END

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