第99話 ダンジョンへ向かう
ヴィクトリアの居場所も分かり、トリニティさんは宿にいる。
後はアレクさんとルークさんの二人だけ。
今日、これから依頼の件で探索者ギルドに確認に行くけど、その時にアレクさんとルークさんの所在が分かると助かるんだけどね。
昨日と同じ時間に、受付の女性に言われた通り探索者ギルドを訪ねると、すぐに呼ばれる。
「お客様、依頼を受けてくれるパーティーが見つかりました」
……そういえば、僕たちの名前を教えるの忘れてたな。
受付の女性も教えてくれなかったから、名乗らずじまいだった。
「すみません、僕たちの名前を名乗らずに依頼してしまって……」
「いえ、私も聞かずに依頼書を書き終えて気付いたものですから……」
「では、改めて、僕はレオンといいます。こっちはアル」
『アルという、よろしくのう』
「私は、依頼受付担当のミアと申します。このたびは、お手数をおかけしました。
それでですね、ご依頼のダンジョン案内を引き受けてくれたのが二つのパーティーでして、『黒き深淵の狼』と『白い悪魔の翼』といいます。
どちらも高ランクパーティーなのですが、実はどちらも別の依頼を受けてまして主力がそちらに集中してしまい、若干戦力は落ちますがダンジョン案内の依頼は大丈夫だと思いますが……」
どうやら、目当てのパーティーが受けてくれたが、主力が別の依頼に行ってしまい僕の依頼はパーティーのおまけで十分だろうというわけか。
「それで、どんな人がダンジョンの案内を?」
受付嬢のミアさんが、机の上にあったメモを手に取り、どんな人か確認する。
「えっと、『黒い深淵の狼』からは盾役の戦士と回復役の魔法使いの二人ですね。
『白い悪魔の翼』からは、斥候役のシーフとポーター役の魔法使いです。
……ただ、この四名とも奴隷なのですがよろしいでしょうか?」
全員が奴隷ということは、戦士と斥候は探しているアレクとルークだろうな。
ならば好都合というわけか……。
「はい、それでお願いします」
「では、出発は明日の朝、町の東門の前でお待ちください。
それから、潜るダンジョンは初心者ダンジョンになります。
それ……と、こちらのメモに書かれているものをご準備ください」
受付嬢のミアさんから、一枚のメモを渡される。
中にはいろいろと、商品の名前が書かれていた。
「これは?」
「こちらは、最低限ダンジョン探索に必要なものになります。
回復ポーションは勿論のこと、解毒、塗るタイプの回復薬。後は、カンテラなどの光源。
武器や防具の目安など、ここに書かれているものを参考になさってください」
なるほど、今回は素人をダンジョンに案内するわけだから、最低限の準備をして足手まといにならないようにというわけか。
「分かりました、では、ありがとうございました」
『ありがとうのう』
「こちらこそ、ご依頼ありがとうございます。
ダンジョンをしっかり体験してきてください。
それと、何かありましたら私にまでご一報ください」
こうして、受付嬢のミアさんと別れると、さっそく渡されたメモを参考に買い物に行く僕とアルだった。
▽ ▽
次の日の朝、東門の前であると一緒に待っていると四人の探索者が僕たちに近づいてきた。
四人とも、首に隷属の首輪をしている奴隷の人達だ。
「あの、ダンジョン案内を依頼されたレオンさんですか?」
「はい、僕がレオンです。こっちは供のアル」
アルを見て戦士の男が話しかけたので、僕が話すと少し驚いている。
……こうして近くで見ると、全員ボロボロだな。装備も体も。
「俺が今回の案内役のリーダーを務めます、アレクサンダーのアレクといいます」
「俺は斥候をする、ルークだ。よろしくな」
「私は、回復を担当する魔法使いのエヴァ、よろしくね」
「僕は、ポーター、荷物持ちをする魔法使いのマヤ、よろしく」
やっぱり、目的の二人が目の前にいるよ。
一応、生きているようで安心した。
これで、全員の生存を確認できた。
後はタイミングを見計らって、全員を救出できれば……。
「では、出発しましょうか。レオン君とアルさんは、僕たちが守りますから安心して任せてください」
こうして僕たちの『ダンジョン見学ツアー一行』は、出発した。
まずは、初心者ダンジョンまでは徒歩で移動するのではなくて、乗合馬車を利用する。
実は、初心者ダンジョンは王都の近くにあるといっても、距離にして徒歩で2時間かかる距離にある。
そのため、乗合馬車を使い2時間かかるところを20分に短縮するわけだ。
しかも、乗合馬車のため料金もお得となっていて初心者の探索者の財布にも優しいのだ。
「初心者ダンジョンは、もっと王都に近いんだと思っていたな……」
『じゃな、確か、もう一つダンジョンがなかったかのう?』
「それは、魔王が出たという『スティンブルダンジョン』のことですね。
この国で、ダンジョンといえば『スティンブルダンジョン』のことを言います」
アレクが丁寧に答えてくれる。結構いい人だ。
「へぇ~、名前がついているんですね」
「このスティンブルというのは、初代の王様の名前だそうです。
そのダンジョンは、初代の王様がこの国を興した当初からあるものだそうです」
それは、歴史あるダンジョンだな……。
そんな歴史があるということは、長い年月をかけてすごいダンジョンに成長したということか?
直美たち勇者パーティーは、そんなダンジョンを踏破したのか……。
改めて、すごいパーティーだな。
「ということは、これから行く初心者ダンジョンは出来てから新しいものなんですか?」
「ええ、まだ30層ぐらいまでしかありませんから、比較的新しいですね」
そうなのか……。なら、ダンジョンの魔物も弱いものや定番の者になるんだろうな……。
僕は、初めてのダンジョンにウキウキしながら楽しみにしていた。
第99話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




