第97話 ダンジョン依頼
善は急げと、僕とアルは探索者ギルドを探し、ようやくたどり着くことができた。
王都の中心から西へ5分ほど歩いた場所に、探索者ギルドは建っていた。
ギルドの建物は大きく、ダンジョンでの探査が主だとしても需要があるのだろう、昼間だというのに、ギルドの中は賑わっていた。
ギルドに入ってすぐに周りを確認する。
そして、受付を確認するとその上にぶら下がっている『依頼受け付け』の札の下の受付へ足を運ぶ。
受付にたどり着くまでに、いろいろ僕たちを見て話している声が聞こえてくる。
『おいおい、もしかしてあんなガキが探索者登録にか?』
『いや、違うだろ?探索者登録は15以上にならねぇと登録できなかったはずだ』
『なあ、あの爺さん、執事とかじゃないか?』
『ってぇことは、あのガキ…いや、子供が貴族か?』
『言い直すなよ、こっちの声何て聞こえてねぇよ……』
『そうか、アレクはもう使いもんにならねぇか……』
『ああ、あと数回が限界だろうな』
『チッ、また盾を探さねぇとな……』
『おい、斥候はどうしたんだよ』
『ああ、あの奴隷か、あれはもう駄目だろうな……』
『何だよ、失敗したのか?』
……聞こえてくる話の中に、気になる名前が聞こえたな。
どうやらアレクもルークも、かなり使い潰されているようだ。
「ようこそ、探索者ギルドへ。ご依頼は何でしょうか?」
明るい声で挨拶をしてくれたのは、美人の受付譲だ。
髪はロングで金髪碧眼、メイドのような服だがこれが受付嬢の制服なのだろう。
色は明るめで、彼女に似合っていた。
「えっと、依頼の前に質問があるんですがいいですか?」
「はい、構いませんよ」
「ダンジョンに入るには、探索者じゃないとダメですか?」
「えっと、もしかしてご依頼というのは……?」
「はい、僕たちダンジョン探索を経験してみたいんです」
僕の依頼を聞いて、少し受付の彼女は考える。
そして、自分の足元から分厚いファイルのようなものを出しパラパラとめくり始めた。
ある程度めくると、何かを見つけて何度か頷いている。
……なんだろうか?百科事典のような厚さがあるあれは。
「お待たせしました、お客様のご依頼は可能です。
何年か前の依頼書に、今回と同じような内容のものがございました。
基本ダンジョンは危険な場所ではございますが、探索者のパーティーと組んで入ることになります。
それと、入るダンジョンは初心者が入るダンジョンになりますがよろしいですか?」
僕はアルを見て確認すると、アルも了承したのでお願いする。
「はい、それで構いません」
「ありがとうございます。
それから、依頼料ですが、ダンジョンに行かれるのはあなた方二人だけですか?」
「はい、僕たち二人だけです」
「では、1人金貨100枚で合計金貨200枚となります。
料金が高めなのは、初心者ダンジョンといえど高ランクの探索者を雇うためと思って下さい」
「それだけ危険だってことですね、分かってますからその金額でお願いします」
「ご理解いただきありがとうございます。
では、募集期間はいかがいたしましょうか?」
依頼の募集期間か、王都には後7日ほどしかいないし3日をめどにするか。
勇者パーティー救出も、7日以内に終わらせたいしね。
「募集期間は3日で、ダンジョンに入る時間は1日でお願いします」
「分かりました、ではその内容で依頼を出しておきますね。
おそらく明日には受けてくれるパーティーが見つかると思いますので、明日この時間にもう一度お越しいただけますか?」
「はい、了解しました」
「では、本日はご苦労様でした」
僕たちに挨拶を済ませると、受付嬢の彼女はすぐに何かを書き始めていた。
おそらく依頼書を書いているのだろう。
さて、これで念願のダンジョン探索が出来そうだ!
僕はウキウキしながら、アルと一緒にギルドを出て行った。
探索者ギルドを出て、すぐに宿に戻り部屋に着くと、通信端末を取り出しロージーと連絡をとる。
そこで、探索者ギルドに超小型盗聴ボールを忍び込ませるようにお願いする。
「そう、探索者の中に『黒き深淵の狼』というパーティーと『白い悪魔の翼』というパーティーを調べてほしいんだよ」
『……なんですか?その痛いパーティー名は……』
「いやいや、ロージーの言いたいことは分かるけど、そういう名前なんだからしょうがないよ。とにかく、その二つのパーティーを調べてほしいんだよ」
『分かりました、その痛いパーティーにお探しの人物がいるかどうか調べればいいんですね?』
「……お願いします」
そう言って僕はそっと通信端末を切る。
アルは、ロージーとの会話が聞こえていたんだろう、苦笑いを浮かべていた。
「まいったね、探索者たちのパーティー名には……」
『まあ、それはしょうがなかろう。
それよりも、例の娘の居場所、分かったんじゃろ?』
「ロージーたちが探してくれていたよ。どうやら、まだ無事らしい。
時々、あのローガンとかいうアホがちょっかいかけてくるようだけど、側にいる家庭教師が邪魔して防いでいるようだ。
家庭教師がいないときは、メイドが二人ついて見張っていると言ってた」
ローガンの行動は、本能の赴くままだな。
父親であるメイソンの計画を考えて行動していないみたいだ。
……何か緊急事態が起きる前に、アレクとルークの所在を確認しておきたいな……。
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