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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
勇者のその後

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第93話 王城の一角で




宇宙歴4263年1月10日、この日、僕は『バステーユ王国』の王都にアルと2人だけで来ていた。


この王都には大きなダンジョンが二つあり、一つは勇者ナオミ達によって魔王討伐が成功し危険性がなくなったダンジョン。

ただ、このダンジョンは今も生きていて、魔物が出現している。


二つ目が、勇者ナオミたちが魔王を討伐してからできた新しいダンジョンだ。

まだできたばかりらしく、最下層が32階層と浅い。

そのため、初心者の探索者用としては重宝している。


ちなみに、魔王討伐がおこなわれたダンジョンの最下層は210階層だった。


この二つのダンジョンのおかげで、バステーユ王国は潤っていた。



僕たちは、王都の賑わいを肌で感じながらある宿屋を探して歩いていた。

その宿屋にいる人物に用があるからだ……。


宿屋『なにわ亭』と、日本語で書かれた看板の宿屋は王都の中心部の区画から少し離れた路地裏で、その宿屋は営業していた。

もちろん、こんな場所で営業しているのだから客はほとんど入っていない。


「……こんなところで宿屋なんて、商売する気あるのかな?」

『そうじゃな、訳ありの客を相手にした宿なのかもしれんのう……』


「何にしても、灯台下暗しでしたよ」


僕たちは宿の中へ入っていく。



「いらっしゃいませ、なにわ亭へようこそ」




▽    ▽




バステーユ王国王城のある客間で、この国の宰相がある貴族との面会に応じていた。


「ガルザ宰相、勇者ナオミを購入した例の二人は見つかりましたかな?」

「メイソン卿、報告書は出したはずですが?御読みにならなかったのですか?」


「宰相殿、誰があんな報告を真に受けるバカがいるのですか?」

「……信頼のおける者からの報告なのですがね」


「それでも、探す手段はあるのでしょう?」


ガルザ宰相は深いため息とともに、メイソン卿を憐れんで見ていた。

すでに王位はアンソニー王太子で決まっている。第二王子の出る幕はないのだ。

ましてや、秘かに手に入れたという奴隷ヴィクトリアを王女として祭り上げようと画策するとは……。


勇者ナオミには悪いが、ヴィクトリアをこの国の女王にするわけにはいかんのだ。


勇者を使って、魔王討伐の功績でヴィクトリアを女王にし、メイソン卿がうしろだてとなる。

……裏でヴィクトリアはどんな地獄を見ているのか分からんな。

かわいそうに……。



「とりあえず、例の二人の行動から目的を探らせ捜索しております」

「ほう、行動とは?」

「例の二人は、奴隷を大量に購入していました。

それも、家族奴隷を、です。そこから、村などを新たに興すのではないかと思い近辺から情報を収集させました」


「それで、分かりましたか?その場所が」


「ええ、ある船乗りが港町『カルロー』の南の島に造りかけの町があったそうです。

現在、確認させていますのでもうしばらくお待ちください」

「カルローから南か……あの辺りは無人島が多かったはずだな……」


メイソン卿、もしかして自ら船を出して探らせる気か?


「メイソン卿、もしや自ら船で探そうとなさりませんでしょうな」

「ん?私自らは行かぬが部下にでも行かせてみようかと……」

「メイソン卿、あの辺りの海は大型の海洋魔獣がウヨウヨいるところですぞ?

普通の船では、すぐに襲われて海の藻屑です」


「……なるほど、そんな海を渡って島に来る者はいないというわけか……。

これはますます、その島に勇者ナオミがいる可能性が出てきたな……」


はぁ~、黒い笑みを浮かべおって、お主の野望が透けて見えておるぞ?

メイソン卿、伯爵の地位でありながらこの国を乗っ取ろうと画策しているとは……。


このような貴族ばかりだな、この国は。




―――――コンッ、コンッ


メイソン卿との話し合いにうんざりしていた時、ドアをノックする音が響いた。

何かあったか?


「入れ」

「失礼いたします宰相様」


ドアを開けて入ってきたのは、私の秘書を務めているルイスだ。


「どうした?何かあったか?」

「はい宰相様、先ほど、城下に契約していた情報屋から例の二人が監視していた宿屋に来たとの情報が」

「何と!すぐに確認させろ、確認後は見張るだけにしておけ」

「畏まりました」


ルイスは、私の命令を聞くとすぐに部屋を出て行った。

私の、正面に座っているメイソン卿の表情が怖いな……。


「ガルザ宰相殿、例の二人を見つけられたのですか?」

「今確認をさせているところだ、確認が取れ次第監視にうつるつもりだが」


「ぬるいですな、すぐにその2人を捕らえて尋問でもなんでもすればよろしいのに……」

「そういうわけにもいかん。

例の二人は、報告の通りなら不思議な力を持っていることになる。

それが、どう働くか分からんのだ……」


「フフフ、バステーユ王国のバジリスクと異名を取った宰相殿が、そのような策を取るとは……」

「私に、そのような異名があるとは初耳ですな」


メイソン卿、その異名を広めたのはお主であることは分かっているのだぞ?

バジリスク、睨まれたものは石になるという蛇の魔物に私を例えるとは……。


おかげで、他国の要人たちからも恐れられて外交から外されたのだぞ……。



「まあいいでしょう、その2人をどうするのか宰相殿のお手並みを拝見しましょう」

「メイソン卿、絶対に手出しはやめてください」


「宰相殿、私は勇者ナオミさえ手に入ればいいのですよ」



そう黒い笑顔で、メイソン卿は部屋を退出していった。

あの顔は、絶対に手を出すつもりだな……。


はぁ、私はどうすればいいのだ……。







第93話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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