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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
月の謎

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第90話 赤い月面




赤い月の月面に降り立つと、そこは僕たちが思い描いていた月面とは違っていた。


『はぁ~……』


宇宙服を着て、月面に降り立つ。

これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍であるって昔の宇宙飛行士が言ってたな……。


夜空を見上げている月に、いつか人類も降り立つ。それはこのファンタジー世界でも同じだろう。

誰かが夜空を見上げ、いつか赤い月と青い月に行ってみたいと思っているだろう。


だが、ここはファンタジー世界、僕たちの知る月面とは一味違っていた。

なにせ……。


『赤い月の正体は、この赤い草原だったのか……』

『すっごいですよね~!こんな光景初めてです!』


僕とエリーの目の前には、赤い草原が映し出されている。

さらに、赤い草原のさらに奥には、青い星が月のように登っているのだ。



宇宙服を着た僕とエリーは、ソフィアとセレニティーに連れられて赤い月に降り立ったが、こんな光景に遭遇するとは思いもよらなかった。

ここはソフィアの住んでいる所だったから、監視衛星を飛ばさなかったけど、今ならいえる、飛ばしておけばよかったと……。


『ソフィア、この生えている草は何?』

「こいつは『魔吸草』じゃよ。魔力さえあればどこにでも生えてくる草じゃ。

魔力回復ポーションの材料になっているそうで、この草を乾燥させて使うらしいの」


『へぇ~、でも、空気の無い宇宙空間でも育つなんて生命の神秘だね~』


「エリー殿、これはこの月の上だからこそこんなにいっぱいに育ったのじゃ。

青い星にもこの『魔吸草』は生えておるが、ここまで群生しておらぬ。

何故かわかるかの?」


『ん~、何故だろう……』

『青い星にある何かが、この『魔吸草』の天敵ってことですか?』


「さすがレオン殿、そうじゃ、この『魔吸草』はの『水』が天敵なんじゃよ」

『え、水が天敵って……』


「よいか?見ておれ……」


そう言うと、ソフィアは月面に向けて水魔法を使った。

ここは重力が小さいから、浴びせるということが出来そうにないので直接赤い草に向けて放ったのだ。


するとどうだ、水を浴びた赤い草は見る見る溶けて消えてしまった。

水に触れた瞬間溶けていくほど、ものすごく溶けやすい草、それがこの『魔吸草』なんだな……。



「どうじゃ、水に触れたと同時に溶けてしまったじゃろ?

このとけやすさは、ポーションを作るうえでは重宝するのじゃが採取は困難じゃ。

しかも……」


『しかも、水のある所では育たず、雨にも弱いですね。

しかも、これは湿気でも溶けてしまいそうだ……』


だからか、こんな月を覆うような草原を作りだしたのは、ここが水が一切ない所で、しかも湿気もないほど乾燥している月面だからこそ、こんな草原が実現していたのか……。



赤い月の正体は、この赤い草の『魔吸草』が月表面を覆うほど生えているからというわけか。

でも、ここまで生える一因はソフィアというエンシェントドラゴンにもあるんだろうな。


ドラゴンの中の特別種である、エンシェントドラゴンの魔力を吸収していたからこそ月を覆うぐらいまで繁殖してしまったともいえるのだろうな……。




『ねえソフィア、1つ疑問があるんだけど』

「何じゃ?レオン殿」

『この『魔吸草』はものすごく水に弱い草で、魔力回復ポーションの材料というけどどうやって採取しているの?後、採取した後の取り扱いは?』


そう、そこまで水に弱い『魔吸草』なら、取り扱いも採取すら難しいことになる。

ということは、魔力回復ポーションを作るなんて夢のまた夢ってことだ。


「レオン君、この『魔吸草』は青い星では砂漠なんかの乾燥地帯で生えているんだよ。

そして、採取するときは『結界魔法』を使うんだよ」

「そうじゃ、結界魔法で『魔吸草』を覆いそのまま採取してしまうのじゃ。

後は採取した『魔吸草』をマジックバッグなどに入れて持ち帰るのじゃよ」


なるほど、マジックバッグ、所謂アイテムボックスのようなものに入れることで、水に触れる可能性を断ち切りギルドなどに渡してしまうということか。


「後は、魔法で乾燥させて薬師や錬金術師のもとへ届け、魔力回復ポーションになるというわけじゃ」

「水に溶けやすい草だから、ポーションにする作業も簡単というわけだね」



魔力回復ポーションか、ここにある『魔吸草』をすべて採取したとして、どのくらいのポーションができるのか……。


僕は思わず、そう考えながら赤い草原を見渡してしまった……。



「どうじゃレオン殿、採取していくかの?」

「採取して青い星の商業ギルドに持っていけば、一財産築けるよ?」


いい笑顔で、ソフィアとセレニティーが僕に提案してくる。

でも僕は、そんな面倒ごとに巻き込まれるようなことはしない。


『そんなことしたら、絶対やっかいなことになるじゃないか……』


「おそらく、そうなるじゃろうの」

『こんなに生えているのに、使い道がないなんてね~』


エリーが、足元の赤い草を撫でながら嘆いていた。

でも、もしかしたら、そのうち使い道が見つかるかもしれないよ。

そのうちにね……。



こうして、僕たちは赤い月を後にする。


ドラゴニックブルーという鉱石が大量にある、青い月。

『魔吸草』という貴重な草が覆い茂っていた、赤い月。


どちらも、厄介ごとが付きまとう資源があった。

青い星から見上げる二つの月に、そんな秘密が隠されているなんて思いもよらないだろうな……。


今の青い星の住民にとって、二つの月は見上げるだけの存在で十分なんだろうね。







第90話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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