第85話 手紙と写真
エリーと一緒に貨物宇宙船『ハルマスティ』の貨物庫に到着すると、すでに開封作業が始まっていた。
ずらりと並ぶ箱を一つ一つ開けて、中身を取り出していく。
作業中のロボットたちを見て驚いた。
ロボットたちが、箱の中から出していたのはカプセル。それもアンドロイドを寝かせて運ぶものだ。
すぐに、作業の指示を出していたロージーのもとへ行き詳細を聞く。
『ええ、届けられたものはアンドロイドで間違いありません。
それも、専用職のアンドロイド計100体です』
専用職アンドロイド。
それは読んで字のごとく、一つの職を専門に行うアンドロイドだ。
知識や仕草まで、その職にあったものを基礎学習とし即戦力となれるのだ。
『う~わ~、この子たち全員がそうなんだ~』
『いいえエリー、全員ではありませんよ。
一名だけ、私たちと同じオールマイティアンドロイドがありました』
オールマイティアンドロイド。
このアンドロイドは、主に侍女や執事アンドロイドと言われ一生のパートナーとして子供のうちに付けられるアンドロイドだ。
父さんの側にいるエマや、母さんの側にいるハンナがその役割をしている。
一応僕の側には、エリーがその役を担っていたんだけど今やロージーにその座を奪われた形だね。
『まだ開封作業の途中ですが、積み荷の内容に専用職アンドロイド100体。
オールマイティアンドロイド1体。そして、若旦那宛の小包が1箱ありました』
「小包?……いやな予感しかしないな」
僕はロージーの足元にあった小包を、渡されるとその場で開けることに。
小包のテープを剥がし、中を見ると手紙とさらに小さな箱が入っていた。
「信頼する息子へ。
定時連絡で元気な姿を見ているから、安心しているがたまにはこっちに帰ってくるように。
母さんが時々心配そうにしているぞ、母さんを悲しませることだけはするなよ?
それと、仕事の方が順調でまた社員が増えることになった。
前回の定時連絡の時に言った人数から1000人ほどアップだ。
だから、専用職アンドロイドの増員が決まったので、レオンの処用の専用職アンドロイドも申請したら通ったよ。
だからそっちに送る。
あと、相棒アンドロイドも送るから大切にしてやってくれ。
最後に、今度の定時連絡で答えを聞きたいから、今質問しておく。
許嫁とお見合い、どっちがいい?
オーバス運輸社長 ニードル・オーバス レオンの父親より」
って、なんてツッコミどころ満載の手紙を送ってくるんだ?!
最初は言い、最初は少し心にきたがその後がダメだ!
僕のところの専用職アンドロイドを申請って、それって会社に申請するところじゃないだろうが!
しかも、通ってる時点でおかしいぞ?!
それと相棒アンドロイドって、また親会社からの新製品のお試しってやつか!
ロージーたちも確かそうだったよね!
感想とか、使ってどうとかまた僕が報告書上げるのかよ……。
あと、最後!
許嫁って?お見合いって?どういうことなの!
どういう理由で、7歳児の僕がお見合いしないといけないの?!
どういう理由で、7歳児の僕に許嫁ができるの?!
「父さん、もっと情報を……」
『あらら~、若旦那、お見合いするの?それとも許嫁の方がいいのかな?』
『……それは、おめでとうございます』
「からかわないでくれ、僕にはどっちも早すぎるよ……」
父さんのバカ、今度の定時連絡の時に詳細を聞き出してやる……。
……はぁ、それはともかくこの小さい箱は何だろう。
僕が小包の中に入っていた、小さい箱を取り出し開けてみると。
そこには写真立てが入っていた。
「写真立てってめずらしいね………あ」
『……あ~』
『……なるほど』
写真立てについている一つだけのボタンを押すと、写真立てに映像が出てくる。
そこには、顔をとろけさせた情けない父さんと赤ちゃんを抱いて笑ってる母さんと笑っている天使のようなルーシーが映っていた。
『……これ立体映像にしなかったのは、家族がそろってなかったためですね』
「そうかな?父さんが間違っただけじゃないの?」
『フフフ、今度は若旦那も入れて撮ろうってことだね~』
……それなら、父さんたちのところに戻る時間を作らないとな!
『ロージー、開封作業終わりましたよって若も着ていたんですね』
『シンシア、私もいるよ~』
『エリーがこんなところに来るとは珍しい、明日は宇宙に雪が舞いそうですね』
『ひどいよ、シンシア~』
……父さんのサプライズはいいとして、まずは専用職アンドロイドを起動したのち宇宙港と軌道エレベーターに配置しないとね。
「ロージー、シンシア、エリー、すぐに専用職アンドロイドを起動させて、それぞれの職場に案内しないとね」
『若旦那、その前にコロニー『楽園』に彼女たちの休息所を造らないといけませんよ』
『そうそう、アンドロイドといえど生活スタイルは人と変わらないからね~』
エリーに指摘されると、何故かムッときてしまうな……。
それなら、三階建てで独身用マンションがあったはず。そこを彼女たちの仮休息所として提供するか。
そこを利用してもらってる間に、専用休息所を建てるか……。
「休息所は、宇宙港や軌道エレベーターに近い所がいいのかな?」
『そうですね、職場に近い方が安心できると思います』
『後は、ストレス解消できるところがあれば言うことないね~』
……それは、コロニーの住人を増やさないといけない問題だな。
とりあえず、出来ることから進めていくかな。
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