第84話 父から届いた荷物
宇宙歴4262年12月20日、オークション関係で来てもらった全員のこれからが決まってからさらに1ヶ月が過ぎたある日、亜空間ゲートから一隻の貨物宇宙船が出てきた。
行き先は、青い星の衛星軌道上にある簡易宇宙港だ。
「船長、亜空間ゲート、無事に潜り抜けました」
「よし、通常航行に移行後、レーダー索敵を展開!
あと一時間で交代だから、それまで頑張れよ!」
『「「はい!」」』
オーバス運輸の使う貨物輸送宇宙船とは違う会社の宇宙船が、青い星に何の用があるのか。
今だ、開通していない航路を宇宙船は進んでいく。
▽ ▽
「貨物宇宙船が、近づいて来てるって?」
今もなお人手不足により、開港できていない宇宙港に外からの貨物宇宙船が係留許可を求めて通信が入ってきた。
貨物宇宙船『ハルマスティ』のブリッジが今も簡易宇宙港の窓口となっている。
そこに通信が入ってきたのだから、こちらの事情を知っての係留許可だろう。
『若旦那、おそらく相手はこちらの事情をご存知だと思われます』
「そうだね、係留許可を出して。
ロージーとシンシアは、宇宙港の方へ行って係留させる桟橋を出してあげて」
『了解です』
「アシュリー、向こうさんの目的は聞いたの?」
『はい、若旦那宛に荷物があるそうです。量が多いので係留して運び出すと』
「エリー、送ってきた相手は?」
『え~と、うちの社長、若旦那のお父様ですよ』
「父さん、何を送ってきたんだろう……この間は子供が生まれたって、自慢してきただけだったのに……」
そう、僕に妹が生まれた。
名前はルーシー、めちゃくちゃかわいかった。モニター越しだったけど……。
でも父さんは自慢するんだよね、母さんに似て美人になるぞとか。
兄になる気持ちは複雑だけど、妹ができたのは素直に嬉しかったりする。
精神がおっさんだから、こうして笑っていられるけど、普通の子供だったらもっと複雑な気持ちなのかな~。
『若、私は何をしたら?』
「ああ、オリビアは引き続きみんなの面倒見てあげて。
勉強熱心なのはいいけど、みんな本に夢中なんだよね……」
『彼女たちからすれば、ここにある本は見たことも聞いたこともないものですからね。
夢中になるのも、わかる気がしますよ』
オリビアのもとで勉強している彼女たち。
ローズ、優奈、直美に加えてエルフのイザベラも一緒に学んでいる。
いろんな知識を知り、細かいことは睡眠学習で身につけている。
もちろん、実践することもあるから、学力がぐんぐん上がっているようだ。
「とりあえず、休憩はとるように指導しておいてね」
『了解しました』
係留許可を出し、貨物宇宙船が係留できる桟橋を用意してから2時間後、貨物宇宙船が到着した。
「輸送貨物宇宙船『レブリウス』艦長、ジャクソン・コルウッドです。
これから荷下ろしに入りますので、よろしくお願いします」
「ここの星の管理人をしている、レオン・オーバスです。
こんな遠くまで輸送していただきありがとうございます。荷下ろし手伝います」
艦長との挨拶を終えると、すぐに荷下ろし作業に入った。
何を送ってきたのか楽しみだったことと、ここまで輸送してくれた人たちを早く返してあげたかったからだ。
この宙域は、まだまだ他の宙域と比べて安全とは言えないからね。
もちろん、僕の管理する青い星や管理予定の緑の星周辺の宙域は安全になるようにしているけど。
ロージーとシンシアが中心となって、ハルマスティ搭載のロボットを何台か使い積み荷を降ろしていく。
といっても、宇宙港に降ろすわけじゃなくて、宇宙船ハルマスティに移し替えるという作業だ。
今だ宇宙港は、設備はあるのに稼働していないんだよね……。
積み荷の移し替えは1時間で終了、受領書へのサインや確認を終えて、輸送貨物宇宙船『レブリウス』は帰っていった。
もちろん、宙域の安全航行のために護衛を亜空間ゲートまで同行させましたよ。
「さて、積み荷の確認をしてきますか」
『はいはい!私もご一緒したいです!』
エリーが、ものすごくうれしそうな笑顔でお願いしてくる。
何かあるのかな?
「いいけど、向こうにロージーとシンシアもいるよ?」
『構いません、どうしても確認したいんです!』
「……まあいいか、ついて来てエリー」
『は~い!』
ブリッジに残るアシュリーに、後のことをお願いして、僕とエリーは貨物庫へ向かった。
▽ ▽
「あだ~」
「ぬふふふ、可愛いな~」
ベビーベッドで寝ているルーシーを、ダンナがとろけた顔で眺めている。
曰く、眺めているだけで幸せになるそうだ。
「そういえば、レオンの時もこんな感じだったわね……」
『はい、ニードル様は世間でいうところの親バカなのでしょう』
まったく、レオンにルーシーちゃんのことを知らせるんじゃなくて自慢してどうするの?
仕事もエマに丸投げにしていて、大丈夫なのかしら?
アンドロイドが社長代理っていうのも、おかしな話……でもないわね最近は。
「ほら、あなた。レオンに送った荷物が届いたか確認はしたの?」
「お、そろそろ届く頃か?」
「期間的にそろそろじゃないかしら?
わざわざ、知り合いの会社に任せたんでしょ?」
「レオンのいる宙域は、まだ航路がはっきりしてないからな……。
配達してくれる知り合いを探すのに、苦労したんだよな……」
旦那が空中に手をかざすと、そこにタッチパネルが出現する。
そして、暗証番号を打つと画面が変わり、荷物の行方が追跡できる。
「……どうやら、レオンのところに届いたようだ。
ぐふふふ、レオンの奴の驚く顔が目に浮かぶな!」
……ほんと、悪戯好きな旦那様ね~。
私は、苦笑いを浮かべるだけだった。
第84話を読んでくれてありがとうございます。
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