第80話 拠点の島へ
昼前にようやく浜辺に着いた僕は、馬車から降りて海に向かって宇宙船を召喚する。
召喚といっても、僕の亜空間ドックから宇宙船を出すだけなのだが、傍から見ると宇宙船を召喚しているように見えるらしい。
「今回は、シンプルに輸送船を出すか……」
亜空間ドックの中にある輸送宇宙船『エレイン』を、出現させる。
亜空間の入り口が現れると、そこから輸送宇宙船『エレイン』が出てくる。
全長125メートル、輸送船にしては大きく前に行くほど鳥のくちばしのようにとがっている。
艦の後部は、輸送艦とは思えない大きさのノズルが二つ、メインブースターとなっている。
また、艦の下に設置された円筒状のものが重力をコントロールする装置で、輸送艦に積まれる荷物などの重量を軽減させるものとして設置されている所は輸送艦といえるだろう。
「な、な、な」
馬車の後部から外を覗いていた勇者さんが、海の上に現れていく輸送宇宙船『エレイン』を見て言葉に詰まるほど驚いている。
海から10センチのところに浮かぶ輸送宇宙船。
その横面が、縦10メートル横3メートルの幅で開き、砂浜と輸送船の間の橋渡し役となった。
馬車の後部から覗いて驚いている皆を、クスリと笑いながら僕は御者に馬車ごと中に入るように指示を出した。
馬車ごと中に入れると、輸送宇宙船『エレイン』の倉庫内部は、中央に大きな大木が一本植えられており、その周りは周囲20メートルの広さが芝生となっていた。
「え~、皆さん馬車の旅、お疲れさまでした。
ここからは、この船に乗って目的地の島に向かいます。
その間は、ここで寛いでいてください」
そう言って、馬車に乗っていた全員をおろし芝生へと案内した。
「それじゃあ、アルはブリッジへ。
クレアとソフィアは、悪いけどみんなと一緒にいてくれ」
『了解じゃ』
「分かりました、ご主人様」
「うむ、それは儂としても願ってもない事じゃ」
どうやら、ソフィアはセレニティーと何か相談があるみたいだ。
それぞれが、別れた後僕は馬車を亜空間に収納する。
そこへ、勇者ナオミさんが声をかけてきた。
「ちょ~といいかしら?聞きたいことが、山ほど出てきたんだけど……」
何故かその顔は、笑顔なのに怒っているようにしか見えない。
「で、では、ブリッジについて来てください」
「ええ、お邪魔するわね」
ブリッジまでの通路では、何も話さず黙って僕の後をついてくる勇者ナオミさん。
格納庫から50メートルほど歩いた先にあるブリッジに到着すると、先に来て準備をしていたアルに指示を出す。
「アル、格納庫のハッチを閉めて。それからメインエンジン点火」
『了解、ハッチ閉め~。メインエンジン点火!』
すると、大きな画面のモニターに格納庫の、僕たちが馬車で入ってきたハッチが閉まっていく。
「すごい……ここはSFの世界だわ……」
「グラビティシステム作動、格納庫は1Gをキープ。船体を上空100メートルの位置へ」
『了解~、船体を上空へ~』
「あ、ナオミさん、この椅子に座ってください」
ボー然としていた勇者ナオミさんは、僕の言葉で気づきすぐに椅子に座る。
勇者ナオミさんが椅子に座ると、船体が少し傾き上空ゆっくり飛び出した。
「船体シールドをレベル3へ」
『了解~、船体シールドをレベル3へ~』
「え?何か……あ」
ブリッジの下方部の窓から、浜辺に集まっている人たちが見える。
そこには、行商人やその護衛と思われる人たち。
さらに、僕たちを追いかけて来ただろう騎士たちも見えた。
また、離れた森の中からこちらを伺っている人も何人か見えたことから、監視が付けられていたのだろう。
「……何か騒いでいるようだけど、ここは無視していきましょう」
「そ、そうね。あの人たちに、何かできるとは思えないけど……」
こうして、港町から上空へ離れることができた僕たちは、東へ進みながら高度を上げ、雲の上に到達すると目的地の島がある南へ方向を変えた。
「さて、質問いいかしら?レオン君」
「あ~、すみません、もうすぐ目的地なのであとでお願いします」
「え、もう着くの?」
港町から、僕たちの拠点である島までは海を船で行けば7日ぐらい。
宇宙船で行けば、30分かからないのだ。
「速度を落として、着陸態勢へ」
『着陸態勢へ~』
「あれが目的の島です。上空から見て塀が三重になっているの内側に、町を作ったんですよ。まだまだ人手不足なんですけどね……」
勇者ナオミさんはブリッジの下方部の窓から町を見ると、確かに城壁らしものが三重に建っている。
城壁の外側には、森が広がっており島の大半がその森のようだ。
城壁の内側は、畑が広がり町の中心地区に家が集中している。
大きな建物は、お城のような建物だけで、ざっと見た感じギルドなどはないようだ。
「あれは何の建物なの?」
勇者ナオミさんが指さしたのは、お城から少し離れた場所にある塔のような建物。
塔の上は大きく穴が開いており、下まで丸見えのように思える。
「あれは軌道エレベーターですよ。
あれに乗って、衛星軌道上にあるコロニー『楽園』に行くわけです。
また、降りてくるときもあれを使いますね」
見た目は古臭い塔のように装っておきながら、その実は最新の軌道エレベーター?
科学世界と魔法世界が混在している島……。
勇者ナオミは、これからの自分を考えながら宇宙船の着水を見守った。
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