第8話 簡易宇宙港とコロニー
青い星の調査報告はいったん休憩とし、昼食を食べた後再び再開となった。
『若旦那、星のデータ解析の計算が終了しました。概ね、地球型惑星に見られる大気で間違いありません』
「シンシア、概ねってことは違いがあったの?」
シンシアは手元のパネルを操作し、空中モニターに解析した大気の成分を表示していく。
そこに表示される成分の一番下に、それは表示された。
「やっぱり『魔素』か……」
『若旦那は分かっていたんですか?』
「まあねシンシア、確か何百年か前に他の宇宙域でも今回のような『魔素』を含んだ惑星が発見されなかったかな?」
『よくご存知でしたね、若旦那。今、過去の管理惑星を調べていると確かに『魔素』を含んだ大気をもつ惑星を管理した事実があるようです。
今は、どうなったのか情報が挙がっていませんが……』
「ならロージー、至急問い合わせてくれ。今後のこの青い惑星の管理のヒントになるかもしれないからね」
『分かりました』
魔素が待機中にあるってことは、この青い惑星内では魔法が使用されているのかな?
あの惑星の地上はファンタジー世界ってことか……。
いずれ、あの惑星の地上へ降りないといけないな!
「オリビア、青い惑星に住む人種は調べられたかい?」
『先ほどの過去の管理惑星の簡易資料が役に立ちました。やはり、魔素を体内に取り込めて自らの力とすることができる種族のようです。
簡単に言えば、あの星の住人はほとんどが魔法使いだってことですね』
魔法使いか……。
「その魔法だけど、僕たちがあの惑星に降りると魔法が使えるようになるのかい?」
『おそらく使えないと思われます、若。
過去の管理惑星の簡易資料にも、魔素の漂う惑星で生活しても魔法は使えなかったと……』
「魔素も身に付かなかったの?」
『はい、そのため地上で流通していた『魔道具』なるものも使えなかったとこの資料に』
魔道具すら使えなかったということは、魔力自体が無いってことか……。
ファンタジーはあきらめよう……。
―――マスター、ドックで組み立てていたものが完成しました。
ファンタジー世界の魔法をあきらめた時、僕の頭の中に声が響いた。
この声の持ち主は、亜空間ドックにいる作業員のリーダーだ。僕は亜空間ドックで何かを造ったり修理修復するとき、必ず働いてもらうのが作業員型ロボットたち。
全部で1000体ほどが、僕の亜空間ドックに常駐しているのだからどれだけ規格外の亜空間倉庫かが分かるだろう。
「今、亜空間ドックで組み立てていた宇宙港付きコロニーが完成した。
今から外に出すから、この宇宙船『ハルマスティ』を宇宙港にドッキングさせてくれ」
『若旦那、私が操縦してドッキングさせます』
「頼むぞロージー。それじゃあ、出現させるぞ!」
宇宙船ハルマスティの前方に黒い楕円形の形の空間が出現すると、そこから円筒形の大きな金属が出現してきた。
『若、あれが組み立てた……?』
「そう、宇宙港付きコロニーだよ。全長6キロ、直径6キロの小型のコロニーだね。
小型とはいえ、ちゃんと人も住めるし生活だってできるんだ」
円筒形の大きな金属が出現した後に、まっすぐ伸びた棒のようなものの先に四角い箱のようになっているものが現れ、黒い楕円形のものが消える。
『若旦那、もしかしてあの棒状の場所が?』
「いや、ドッキングはその先の四角い箱上の場所だよ。棒状の場所は連結通路になるのかな」
『……なるほど、すべてが簡易の施設というわけですか』
さすがロージー、よくわかっているね~。
惑星『ホーネ』の政府がこれを欲しがったのは、従来の使っていた宇宙港が超新星爆発の余波を受けたため使えなくなり、急遽、この簡易版を取り寄せたのだとか。
超新星爆発の影響で発生した時空乱流により、取り寄せるはずだった簡易版の宇宙港の施設が届かず、惑星『ホーネ』は超新星爆発に泣くことになったある意味犠牲惑星だな……。
そんなことを思い出していると、ロージーの操縦する宇宙船『ハルマスティ』が簡易宇宙港にドッキング、通路が連結され僕たちは宇宙港に入った。
宇宙港の中には誰もいないので、ロージーたちに指示を出してこの宇宙港やコロニーが使えるようにしてもらう。
当然、人手が足りないので船に戻りエリーとアシュリーを起こし手伝ってもらう。
二人は眠そうな目をこすりながら、欠伸をしながらそれぞれ宇宙港やコロニーへ向かった。
まず宇宙港にしてもらわないといけないのは、船体を安定させて衛星軌道上から地上に落ちないようにすること。
コロニーは、太陽光を中に取り入れて空気に対流を作りだすこと。
他にも、簡易版とはいえやることは山ほどあるがロージーたちに任せておけば大丈夫だろう。
コロニーの空気が安定したら、ハルマスティにいる作業ロボットをコロニー整備に回さないとな。ハルマスティには荷物はもうないし、作業ロボットたちが暇しているなら手伝ってもらおうというわけだ。
「……船に戻って惑星を少し観察してこよう」
僕にできることが無くなってしまった……。
第8話を読んでくれてありがとうございます。
次回からは、1日1話になると思います。